新シリーズ:『賢く生きよう』

 

-新約聖書に学ぶ知恵-

 

日本聖書協会新共同訳・新約聖書「ヤコブの手紙」

 

5章

 

◆富んでいる人たちに対して

 

 5:1 富んでいる人たち、よく聞きなさい。自分にふりかかってくる不幸を思って、泣きわめきなさい。

 

 5:2 あなたがたの富は朽ち果て、衣服には虫が付き、

 

 5:3 金銀もさびてしまいます。このさびこそが、あなたがたの罪の証拠となり、あなたがたの肉を火のように食い尽くすでしょう。あなたがたは、この終わりの時のために宝を蓄えたのでした。

 

 5:4 御覧なさい。畑を刈り入れた労働者にあなたがたが支払わなかった賃金が、叫び声をあげています。刈り入れをした人々の叫びは、万軍の主の耳に達しました。

 

 5:5 あなたがたは、地上でぜいたくに暮らして、快楽にふけり、屠られる日に備え、自分の心を太らせ、

 

 5:6 正しい人を罪に定めて、殺した。その人は、あなたがたに抵抗していません。

 

 ◆忍耐と祈り

 5:7 兄弟たち、主が来られるときまで忍耐しなさい。農夫は、秋の雨と春の雨が降るまで忍耐しながら、大地の尊い実りを待つのです。

 

 5:8 あなたがたも忍耐しなさい。心を固く保ちなさい。主が来られる時が迫っているからです。

 

 5:9 兄弟たち、裁きを受けないようにするためには、互いに不平を言わぬことです。裁く方が戸口に立っておられます。

 

 5:10 兄弟たち、主の名によって語った預言者たちを、辛抱と忍耐の模範としなさい。

 

 5:11 忍耐した人たちは幸せだと、わたしたちは思います。あなたがたは、ヨブの忍耐について聞き、主が最後にどのようにしてくださったかを知っています。主は慈しみ深く、憐れみに満ちた方だからです。

 

 5:12 わたしの兄弟たち、何よりもまず、誓いを立ててはなりません。天や地を指して、あるいは、そのほかどんな誓い方によってであろうと。裁きを受けないようにするために、あなたがたは「然り」は「然り」とし、「否」は「否」としなさい。

 

 5:13 あなたがたの中で苦しんでいる人は、祈りなさい。喜んでいる人は、賛美の歌をうたいなさい。

 

 5:14 あなたがたの中で病気の人は、教会の長老を招いて、主の名によってオリーブ油を塗り、祈ってもらいなさい。

 

 5:15 信仰に基づく祈りは、病人を救い、主がその人を起き上がらせてくださいます。その人が罪を犯したのであれば、主が赦してくださいます。

 

 5:16 だから、主にいやしていただくために、罪を告白し合い、互いのために祈りなさい。正しい人の祈りは、大きな力があり、効果をもたらします。

 

 5:17 エリヤは、わたしたちと同じような人間でしたが、雨が降らないようにと熱心に祈ったところ、三年半にわたって地上に雨が降りませんでした。

 

 5:18 しかし、再び祈ったところ、天から雨が降り、地は実をみのらせました。

 

 5:19 わたしの兄弟たち、あなたがたの中に真理から迷い出た者がいて、だれかがその人を真理へ連れ戻すならば、

 

 5:20 罪人を迷いの道から連れ戻す人は、その罪人の魂を死から救い出し、多くの罪を覆うことになると、知るべきです。

 

 

 

4章

 

◆神に服従しなさい

 

 4:1 何が原因で、あなたがたの間に戦いや争いが起こるのですか。あなたがた自身の内部で争い合う欲望が、その原因ではありませんか。

 

 4:2 あなたがたは、欲しても得られず、人を殺します。また、熱望しても手に入れることができず、争ったり戦ったりします。得られないのは、願い求めないからで、

 

 4:3 願い求めても、与えられないのは、自分の楽しみのために使おうと、間違った動機で願い求めるからです。

 

 4:4 神に背いた者たち、世の友となることが、神の敵となることだとは知らないのか。世の友になりたいと願う人はだれでも、神の敵になるのです。

 

 4:5 それとも、聖書に次のように書かれているのは意味がないと思うのですか。「神はわたしたちの内に住まわせた霊を、ねたむほどに深く愛しておられ、

 

 4:6 もっと豊かな恵みをくださる。」それで、こう書かれています。「神は、高慢な者を敵とし、/謙遜な者には恵みをお与えになる。」

 

 4:7 だから、神に服従し、悪魔に反抗しなさい。そうすれば、悪魔はあなたがたから逃げて行きます。

 

 4:8 神に近づきなさい。そうすれば、神は近づいてくださいます。罪人たち、手を清めなさい。心の定まらない者たち、心を清めなさい。

 

 4:9 悲しみ、嘆き、泣きなさい。笑いを悲しみに変え、喜びを愁いに変えなさい。

 

 4:10 主の前にへりくだりなさい。そうすれば、主があなたがたを高めてくださいます。

 

 ◆兄弟を裁くな

 

 4:11 兄弟たち、悪口を言い合ってはなりません。兄弟の悪口を言ったり、自分の兄弟を裁いたりする者は、律法の悪口を言い、律法を裁くことになります。もし律法を裁くなら、律法の実践者ではなくて、裁き手です。

 

 4:12 律法を定め、裁きを行う方は、おひとりだけです。この方が、救うことも滅ぼすこともおできになるのです。隣人を裁くあなたは、いったい何者なのですか。

 

 ◆誇り高ぶるな

 

 4:13 よく聞きなさい。「今日か明日、これこれの町へ行って一年間滞在し、商売をして金もうけをしよう」と言う人たち、

 

 4:14 あなたがたには自分の命がどうなるか、明日のことは分からないのです。あなたがたは、わずかの間現れて、やがて消えて行く霧にすぎません。

 

 4:15 むしろ、あなたがたは、「主の御心であれば、生き永らえて、あのことやこのことをしよう」と言うべきです。

 

 4:16 ところが、実際は、誇り高ぶっています。そのような誇りはすべて、悪いことです。

 

 4:17 人がなすべき善を知りながら、それを行わないのは、その人にとって罪です。

 

 

3章

 

◆舌を制御する

 

 3:1 わたしの兄弟たち、あなたがたのうち多くの人が教師になってはなりません。わたしたち教師がほかの人たちより厳しい裁きを受けることになると、あなたがたは知っています。

 

 3:2 わたしたちは皆、度々過ちを犯すからです。言葉で過ちを犯さないなら、それは自分の全身を制御できる完全な人です。

 

 3:3 馬を御するには、口にくつわをはめれば、その体全体を意のままに動かすことができます。

 

 3:4 また、船を御覧なさい。あのように大きくて、強風に吹きまくられている船も、舵取りは、ごく小さい舵で意のままに操ります。

 

 3:5 同じように、舌は小さな器官ですが、大言壮語するのです。御覧なさい。どんなに小さな火でも大きい森を燃やしてしまう。

 

 3:6 舌は火です。舌は「不義の世界」です。わたしたちの体の器官の一つで、全身を汚し、移り変わる人生を焼き尽くし、自らも地獄の火によって燃やされます。

 

 3:7 あらゆる種類の獣や鳥、また這うものや海の生き物は、人間によって制御されていますし、これまでも制御されてきました。

 

 3:8 しかし、舌を制御できる人は一人もいません。舌は、疲れを知らない悪で、死をもたらす毒に満ちています。

 

 3:9 わたしたちは舌で、父である主を賛美し、また、舌で、神にかたどって造られた人間を呪います。

 

 3:10 同じ口から賛美と呪いが出て来るのです。わたしの兄弟たち、このようなことがあってはなりません。

 

 3:11 泉の同じ穴から、甘い水と苦い水がわき出るでしょうか。

 

 3:12 わたしの兄弟たち、いちじくの木がオリーブの実を結び、ぶどうの木がいちじくの実を結ぶことができるでしょうか。塩水が甘い水を作ることもできません。

 

 ◆上からの知恵

 

 3:13 あなたがたの中で、知恵があり分別があるのはだれか。その人は、知恵にふさわしい柔和な行いを、立派な生き方によって示しなさい。

 

 3:14 しかし、あなたがたは、内心ねたみ深く利己的であるなら、自慢したり、真理に逆らってうそをついたりしてはなりません。

 

 3:15 そのような知恵は、上から出たものではなく、地上のもの、この世のもの、悪魔から出たものです。

 

 3:16 ねたみや利己心のあるところには、混乱やあらゆる悪い行いがあるからです。

 

 3:17 上から出た知恵は、何よりもまず、純真で、更に、温和で、優しく、従順なものです。憐れみと良い実に満ちています。偏見はなく、偽善的でもありません。

 

 

 3:18 義の実は、平和を実現する人たちによって、平和のうちに蒔かれるのです。

2章

 

◆人を分け隔てしてはならない

 

 2:1 わたしの兄弟たち、栄光に満ちた、わたしたちの主イエス・キリストを信じながら、人を分け隔てしてはなりません。

 

 2:2 あなたがたの集まりに、金の指輪をはめた立派な身なりの人が入って来、また、汚らしい服装の貧しい人も入って来るとします。

 

 2:3 その立派な身なりの人に特別に目を留めて、「あなたは、こちらの席にお掛けください」と言い、貧しい人には、「あなたは、そこに立っているか、わたしの足もとに座るかしていなさい」と言うなら、

 

 2:4 あなたがたは、自分たちの中で差別をし、誤った考えに基づいて判断を下したことになるのではありませんか。

 

 2:5 わたしの愛する兄弟たち、よく聞きなさい。神は世の貧しい人たちをあえて選んで、信仰に富ませ、御自身を愛する者に約束された国を、受け継ぐ者となさったではありませんか。

 

 2:6 だが、あなたがたは、貧しい人を辱めた。富んでいる者たちこそ、あなたがたをひどい目に遭わせ、裁判所へ引っ張って行くではありませんか。

 

 2:7 また彼らこそ、あなたがたに与えられたあの尊い名を、冒涜しているではないですか。

 

 2:8 もしあなたがたが、聖書に従って、「隣人を自分のように愛しなさい」という最も尊い律法を実行しているのなら、それは結構なことです。

 

 2:9 しかし、人を分け隔てするなら、あなたがたは罪を犯すことになり、律法によって違犯者と断定されます。

 

 2:10 律法全体を守ったとしても、一つの点でおちどがあるなら、すべての点について有罪となるからです。

 

 2:11 「姦淫するな」と言われた方は、「殺すな」とも言われました。そこで、たとえ姦淫はしなくても、人殺しをすれば、あなたは律法の違犯者になるのです。

 

 2:12 自由をもたらす律法によっていずれは裁かれる者として、語り、またふるまいなさい。

 

 2:13 人に憐れみをかけない者には、憐れみのない裁きが下されます。憐れみは裁きに打ち勝つのです。

 

 ◆行いを欠く信仰は死んだもの

 

 2:14 わたしの兄弟たち、自分は信仰を持っていると言う者がいても、行いが伴わなければ、何の役に立つでしょうか。そのような信仰が、彼を救うことができるでしょうか。

 

 2:15 もし、兄弟あるいは姉妹が、着る物もなく、その日の食べ物にも事欠いているとき、

 

 2:16 あなたがたのだれかが、彼らに、「安心して行きなさい。温まりなさい。満腹するまで食べなさい」と言うだけで、体に必要なものを何一つ与えないなら、何の役に立つでしょう。

 

 2:17 信仰もこれと同じです。行いが伴わないなら、信仰はそれだけでは死んだものです。

 

 2:18 しかし、「あなたには信仰があり、わたしには行いがある」と言う人がいるかもしれません。行いの伴わないあなたの信仰を見せなさい。そうすれば、わたしは行いによって、自分の信仰を見せましょう。

 

 2:19 あなたは「神は唯一だ」と信じている。結構なことだ。悪霊どももそう信じて、おののいています。

 

 2:20 ああ、愚かな者よ、行いの伴わない信仰が役に立たない、ということを知りたいのか。

 

 2:21 神がわたしたちの父アブラハムを義とされたのは、息子のイサクを祭壇の上に献げるという行いによってではなかったですか。

 

 2:22 アブラハムの信仰がその行いと共に働き、信仰が行いによって完成されたことが、これで分かるでしょう。

 

 2:23 「アブラハムは神を信じた。それが彼の義と認められた」という聖書の言葉が実現し、彼は神の友と呼ばれたのです。

 

 2:24 これであなたがたも分かるように、人は行いによって義とされるのであって、信仰だけによるのではありません。

 

 2:25 同様に、娼婦ラハブも、あの使いの者たちを家に迎え入れ、別の道から送り出してやるという行いによって、義とされたではありませんか。

 

 2:26 魂のない肉体が死んだものであるように、行いを伴わない信仰は死んだものです。

 

 

 

1章

 

◆挨拶

 

 1:1 神と主イエス・キリストの僕であるヤコブが、離散している十二部族の人たちに挨拶いたします。

 

 ◆信仰と知恵

 

 1:2 わたしの兄弟たち、いろいろな試練に出会うときは、この上ない喜びと思いなさい。

 

 1:3 信仰が試されることで忍耐が生じると、あなたがたは知っています。

 

 1:4 あくまでも忍耐しなさい。そうすれば、完全で申し分なく、何一つ欠けたところのない人になります。

 

 1:5 あなたがたの中で知恵の欠けている人がいれば、だれにでも惜しみなくとがめだてしないでお与えになる神に願いなさい。そうすれば、与えられます。

 

 1:6 いささかも疑わず、信仰をもって願いなさい。疑う者は、風に吹かれて揺れ動く海の波に似ています。

 1:7 そういう人は、主から何かいただけると思ってはなりません。

 

 1:8 心が定まらず、生き方全体に安定を欠く人です。

 

 ◆貧しい者と富んでいる者

 

 1:9 貧しい兄弟は、自分が高められることを誇りに思いなさい。

 

 1:10 また、富んでいる者は、自分が低くされることを誇りに思いなさい。富んでいる者は草花のように滅び去るからです。

 

 1:11 日が昇り熱風が吹きつけると、草は枯れ、花は散り、その美しさは失せてしまいます。同じように、富んでいる者も、人生の半ばで消えうせるのです。

 

 ◆試練と誘惑

 

 1:12 試練を耐え忍ぶ人は幸いです。その人は適格者と認められ、神を愛する人々に約束された命の冠をいただくからです。

 

 1:13 誘惑に遭うとき、だれも、「神に誘惑されている」と言ってはなりません。神は、悪の誘惑を受けるような方ではなく、また、御自分でも人を誘惑したりなさらないからです。

 

 1:14 むしろ、人はそれぞれ、自分自身の欲望に引かれ、唆されて、誘惑に陥るのです。

 

 1:15 そして、欲望ははらんで罪を生み、罪が熟して死を生みます。

 

 1:16 わたしの愛する兄弟たち、思い違いをしてはいけません。

 

 1:17 良い贈り物、完全な賜物はみな、上から、光の源である御父から来るのです。御父には、移り変わりも、天体の動きにつれて生ずる陰もありません。

 

 1:18 御父は、御心のままに、真理の言葉によってわたしたちを生んでくださいました。それは、わたしたちを、いわば造られたものの初穂となさるためです。

 

 ◆神の言葉を聞いて実践する

 

 1:19 わたしの愛する兄弟たち、よくわきまえていなさい。だれでも、聞くのに早く、話すのに遅く、また怒るのに遅いようにしなさい。

 

 1:20 人の怒りは神の義を実現しないからです。

 

 1:21 だから、あらゆる汚れやあふれるほどの悪を素直に捨て去り、心に植え付けられた御言葉を受け入れなさい。この御言葉は、あなたがたの魂を救うことができます。

 

 1:22 御言葉を行う人になりなさい。自分を欺いて、聞くだけで終わる者になってはいけません。

 

 1:23 御言葉を聞くだけで行わない者がいれば、その人は生まれつきの顔を鏡に映して眺める人に似ています。

 

 1:24 鏡に映った自分の姿を眺めても、立ち去ると、それがどのようであったか、すぐに忘れてしまいます。

 

 1:25 しかし、自由をもたらす完全な律法を一心に見つめ、これを守る人は、聞いて忘れてしまう人ではなく、行う人です。このような人は、その行いによって幸せになります。

 

 1:26 自分は信心深い者だと思っても、舌を制することができず、自分の心を欺くならば、そのような人の信心は無意味です。

 

 1:27 みなしごや、やもめが困っているときに世話をし、世の汚れに染まらないように自分を守ること、これこそ父である神の御前に清く汚れのない信心です。