桜台教会シリーズ:『賢く生きよう』 

-ユダヤ人の知恵に学ぶー

シラ書〔集会の書〕

新共同訳聖書外典

 

-ベン・シラの書について-

 

 

 この書は『ソロモンの知恵(箴言)』や『コヘレトの言葉(伝道の

 

書)』と同じ知恵文学に属する。我々が持つ聖書正典66巻から外さ

 

れているが、カトリック教会ではラテン語訳により古くから「教会の

 

書」として用いられ会員も良く読んでいる。プロテスタント教会では

 

「旧約聖書続編つき」を購入しなければ読む機会が無い。『外典』と

 

位置付け、66巻の正典から外している。救いの書として聖書正典を

 

重んじるプロテスタントでは当然のことである。特に外典は信仰義認

 

など魂の救済に関する教義が教えられていないことにより、教会でも

 

積極的に学ぶことを勧めて来なかった。そのために一般の信者には読

 

む機会が失われている。しかし、カトリック教会はもとより長いキリ

 

スト教伝統に生きる欧米社会では、この書は信仰者の生活の知恵とし

 

て愛読され、倫理的規範としての子供への躾け書としても用いられて

 

キリスト教的常識を形成している。キリスト教的歴史の浅い日本のキ

 

リスト者が世界的に活躍する時代を思えば、早い段階でこの書物に触

 

れることがキリスト教世界を生きる知恵を得るためにも重要であろ

 

う。

 

 

 

 本書は序文にその著述の意図と背景が書かれている。原書名は『シ

 

ラクの子イエスの知恵』であるが、一般に『ベン・シラの書』と呼ん

 

でいる。このように呼ぶ書名そのものに意味がある。『ベン・シラ

 

(シラの子)』とはこの書を学んで『道を究めて生きる人』とも解釈さ

 

れる。ヘブル語でベンは子、シラは人名であると共に、道、いばら

 

、シロアム=遣わされた者などの意味がある。著者は「シラ・エレア

 

ザルの子、エルサレムに住むイエス」(50:27)とあり、その孫が

 

BC132年、エジプトのプトレマイオス7世の時、アレキサンドリ

 

アでギリシャ語に翻訳したとある。ヘブル語による実際の著作年代は

 

紀元前190年から180年ごろである。

 

 当時イスラエルはエジプトとシリアの大国のはざ間にあった。後に

 

イスラエルはシリアのアンティオカスエピファネス王の下に蹂躙され

 

るが、ギリシャ化(ヘレニズム)が進む中、祭司の職にあった著者が

 

イスラエルの伝統を回復するために英知を結集して著作した文書であ

 

る。アレキサンダー大王によるヘレニズム化はイスラエルの歴史文化

 

にも大きな影響を残している。アレキサンドリアは紀元前3世紀以来

 

ディアスポラ(離散した)ユダヤ人が多く住み、異文化ではあったがそ

 

の文化レベルは図書館にも代表される通り、世界最大の繁栄を誇って

 

いた。

 

著者はイスラエルの信仰と宗教を誇りとしつつ、ヘレニズムの退廃

 

する生活圏の中でヤーウエへの信仰を保持する生き方を教示する。

 

それは神と共に生きる生き方であり、旧約の歴史を学び直して民族

 

のアイデンティティを回復する事にあった。それ故にシラ書の44

 

章以下には創世記から始まる歴史的人物について言及している。こ

 

れもまたクリスチャンには有益な学びとなる。

 

 

 

 クリスチャンがさらに豊かな知恵を得て、この時代を賢く、

 

 元気よく生きるめに読んで頂きたい文書である。

 

 

 

 

 

 

(外典:ベン・シラ 集会の書 序言

 

 

1-2 律法の書と預言者の書およびその後に書かれた他の書物は、

  我々に多くの貴重な教えを残してくれているが、

 

3 そこに述べられている教訓と知恵のゆえに、

  我々はイスラエルをほめたたえるべきである。

 

4 ところで、それらを読む者は、自分自身が理解して賢く

  なるだけでは十分と言えない。

 

5-6 学問を大切にする者は、また、自らも語ったり書いたりして、

  一般の人々の役に立ちうる人でなければならない。

 

7-10 わたしの祖父イエススは、長年、律法の書と預言者の書

  と先祖たちの他の書物を読むことに専念した。

 

11 そして十分習熟した後、

 

12 教訓と知恵に関する書物を自分も書く気になった。

 

13 それは、学問を大切にする人たちが、その教訓と知恵を

  しっかりと把握して、

 

14 なおいっそう律法に適った生活ができるようになるためである。

 

15 そこで読者にお願いする。

 

16-17 素直な心でこの書物を精読してほしい。

 

18-20 我々は、懸命に努力したのであるが、上手に翻訳されて

  いない語句もあると思われるので、そのような個所については

  どうかお許し願いたい。

 

21-22 というのは、元来ヘブライ語で書かれているものを他の言語に

  翻訳すると、それは同じ意味合いを持たなくなってしまう

  からである。

 

23 この書物だけではなく、

 

24-25 律法の書それ自体と預言者の書および他の書物でさえも、

 

26 いったん翻訳されると、原著に表現されているものと

  少なからず相違してくるのである。

 

27 エウエルゲテス王の治世の第三十八年に、

 

28 わたしはエジプトにやって来てしばらく滞在したが、

 

29 そのとき、かなり重要な教訓が記されている書物の写しを

  見つけた。

 

30 そこでわたし自身も、熱意と努力を傾けて、祖父の書を

  翻訳することが改めて必要であると考えた。

 

31-36 そのとき以来、異国にあって勉学にいそしみたいと願い、

   更に、律法に適った生き方をしようとの志を強く抱いている人

  たちのためにも、本書を完成させて公に しようと、しばしば

  徹夜して、また、あらゆる知識を駆使して、この仕事に取り

   かかったのである。

  1章

 1 すべての知恵は、主から来る。主と共に永遠に存在する。

 

 2 浜辺の砂、雨の滴、/永遠に続く日々、/

    だれがこれらを数え尽くしえようか。

 

 3 天の高さ、地の広さ、/地下の海、知恵の深さ、/

    だれがこれらを探りえようか。

 

 4 知恵は、他のすべてのものに先立って造られ、/

    その悟る力も、永遠の昔から存在している。

 

 5 〔知恵の泉は、いと高き所にいます神の言葉、/

     知恵の歩みは、永遠の掟。〕

 

 6 知恵の根源が、だれに示されたであろうか。

    その巧みさを、だれが知りえたであろうか。

 

 7 〔知恵がもたらす知識を、だれが見たであろうか。

      知恵がもたらす豊かな経験を、/だれが理解したであろうか。

 

 8 知恵ある方はただひとり、いと畏き方、/玉座に座っておられる主である。

 

 9 主御自身が知恵を造り、/これを見て、価値あるものとされ、/

   造られたすべてのものの上に知恵を注がれた

 

10 主は、すべての人々に分に応じて知恵を与え、/

  主を愛する者には惜しみなくそれを与えられた。

  〔主を愛することこそ、輝かしい知恵。主は、御自分を示すために、

  知恵を分け与え、/こうして彼らは主を見るようになる。〕

 

11 主を畏れることは、誉れと誇り、/幸せと喜びの冠である。

 

12 主を畏れることは、心を楽しませ、/喜びと、幸福と、

  長寿をもたらす。 

 〔主を畏れることは、主からの賜物、/

  それによって愛の道を歩むことができる。〕

 

13 主を畏れる人は、幸せな晩年を送り、/

  臨終の日にも、主から祝福を受ける。

 

14 主を畏れることは、知恵の初めである。

  知恵は、主を信じる人たちに/母の胎内にいるときから与えられている。

 

15 知恵は、人々の間に揺るぎない基を据え、/

  人々は、幾世代にもわたってそれに信頼を置く。

 

16 主を畏れることは、知恵に満たされること、/

  人々は、知恵の果実に陶酔し、

 

17 彼らの家は、すべて望むもので満たされ、/

  そのすべての倉は、知恵の産物で満ちあふれる。

 

18 主を畏れることは、知恵の冠、/平和の花を咲かせ、健康を保たせる。

 〔主への畏敬と知恵こそは、/平和をもたらす神の賜物、/

  神を愛する者に誇りは増し加わる。

 

19 主はこれを見て、価値あるものとされた。〕/

  知恵は、知識と悟りを雨のように注ぎ、/知恵を保つ者の栄誉を高める。

 

20主を畏れることは、知恵の根源、/そこから生え出る枝は、長寿である。

 

21〔主を畏れることは、罪を退け、/その畏れを心にとどめる人は、/

     すべての怒りを遠ざける。〕

 

22 不当な憤りには、弁解の余地がなく、/理不尽な憤りは、身の破滅を招く。

 

23 辛抱強い人は、時が来るまで耐え忍ぶ。

     耐え忍んだ後には、気分が晴れて壮快になる。

 

24 彼は語るべき時が来るまで、口を慎む。

     そうすると多くの人々は、/彼の思慮深さを伝え広める。

 

25 知恵の倉には、知識に満ちた箴言がある。

      しかし罪人は、敬神の心を忌み嫌う。

 

 26 知恵を熱望するならば、/主の掟を守り通すがよい。

      主は知恵を豊かに与えてくださる。

 

 27 主を畏れることは、知恵であり、教訓である。

      主は、誠実と柔和を喜ばれる。

 

 28 主を畏れることをいとうな。

       二心をもって主に近づいてはならない。

 

 29 人々の前で己を偽るな。お前の口を慎むがよい。

 

 30 高ぶった思いを抱くな。さもないと、つまずいて恥をかく。

       主は、お前の正体を明らかにし、/会堂の中で面目を失わせる。

       なぜなら、お前は畏れを持たずに主に近づき、/

       心は偽りに満ちていたのだから。

 

 

シラ書 (コプト教会英語訳

Chapter 1

 

1

All wisdom is from the Lord God, and hath been always with him, and is before all time.

 

2

Who hath numbered the sand of the sea, and the drops of rain, and the days of the world? Who hath measured the height of heaven, and the breadth of the earth, and the depth of the abyss?

 

3

Who hath searched out the wisdom of God that goeth before all things?

 

4

Wisdom hath been created before all things, and the understanding of prudence from everlasting.

 

5

The word of God on high is the fountain of wisdom, and her ways are everlasting commandments.

 

6

To whom hath the root of wisdom been revealed, and who hath known her wise counsels?

 

7

To whom hath the discipline of wisdom been revealed and made manifest? and who hath understood the multiplicity of her steps?

 

8

There is one most high Creator Almighty, and a powerful king, and greatly to be feared, who sitteth upon his throne, and is the God of dominion.

 

9

He created her in the Holy Ghost, and saw her, and numbered her, and measured her.

 

10

And he poured her out upon all his works, and upon all flesh according to his gift, and hath given her to them that love him.

  

11

The fear of the Lord is honour, and glory, and gladness, and a crown of joy.

 

12

The fear of the Lord shall delight the heart, and shall give joy, and gladness, and length of days.

 

 

13

With him that feareth the Lord, it shall go well in the latter end, and in the day of his death he shall be blessed.

 

14

The love of God is honourable wisdom.

 

15

Ana they to whom she shall shew herself love her by the sight, and by the knowledge of her great works.

 

16

The fear of the Lord Is the beginning of wisdom, and was created with the faithful in the womb, it walketh with chosen women, and is known with the just and faithful.

 

17

The fear of the Lord is the religiousness of knowledge.

18

Religiousness shall keep and justify the heart, it shall give joy and gladness.

 

19

It shall go well with him that feareth the Lord, and in the days of his end he shall be blessed.

 

20

To fear God is the fulness of wisdom, and fulness is from the fruits thereof.

 

21

She shall fill all her house with her increase, and the storehouses with her treasures.

 

22

The fear of the Lord is a crown of wisdom, filling up peace and the fruit of salvation:

 

23

And it hath seen, and numbered her: but both are the gifts of God.

24

Wisdom shall distribute knowledge, and understanding of prudence: and exalteth the glory of them that hold her.

 

25

The root of wisdom is to fear the Lord: and the branches thereof are longlived.

 

26

In the treasures of wisdom is understanding, and religiousness of knowledge: but to sinners wisdom is an abomination.

  

27

The fear of the Lord driveth out sin:

 

28

For he that is without fear, cannot be justified: for the wrath of his high spirits is his ruin.

 

29

A patient man shall bear for a time, and afterwards joy shall be restored to him.

 

30

A good understanding will hide his words for a time, and the lips of many shall declare his wisdom.

 

31

In the treasures of wisdom is the signification of discipline:

 

32

But the worship of God is an abomination to a sinner.

 

 

33

Son, if thou desire wisdom, keep justice, and God will give her to thee.

 

34

For the fear of the Lord is wisdom and discipline: and that which is agreeable to him,

 

35

Is faith, and meekness: and he will fill up his treasures.

 

36

Be not incredulous to the fear of the Lord: and come not to him with a double heart.

 

37

Be not a hypocrite in the sight of men, and let not thy lips be a stumblingblock to thee.

 

38

Watch over them, lest thou fall, and bring dishonour upon thy soul,

 

39

And God discover thy secrets, and cast thee down in the midst of the congregation.

 

40

Because thou camest to the Lord wickedly, and thy heart is full of guile and deceit.

 

 

 

 

 

2章

 

  1 子よ、主に仕えるつもりなら、/自らを試練に向けて備えよ。

 

  2 心を引き締めて、耐え忍べ。災難のときにも、取り乱すな。

 

  3 主に寄りすがり、決して離れるな。そうすれば、

   豊かな晩年を送ることになる。

 

  4 身にふりかかる艱難は、すべて甘受せよ。

  たとえ屈辱を受けても、我慢せよ。

 

  5 金は火で精錬され、/人は屈辱のかまどで陶冶され、/

     神に受け入れられる。

 〔病気のときも貧しいときも、主に依り頼め。〕 

 

  6 主を信頼せよ。そうすれば必ず助けてくださる。

  お前の歩む道を一筋にして、主に望みを置け。

 

  7主を畏れる人たちよ、主の憐れみを待ち望め。

  わき見をしてはならない。さもないと、道を踏み外す。

 

  8 主を畏れる人たちよ、主を信頼せよ。そうすれば必ず報われる。

 

  9 主を畏れる人たちよ、主が賜るすばらしいこと、/

  すなわち、永遠の喜びと憐れみを待ち望め。 

 〔主は喜びに満ちた永遠の賜物を/報酬として与えてくださる。〕

 

10 昔の人々のことを顧みて、よく考えてみよ。

  主を信頼して、欺かれた者があったか。

    主を敬い続けて、見捨てられた者があったか。

  主を呼び求めて、無視された者があったか。

 

11 主は、慈しみ深く、憐れみ深い方、/

  わたしたちの罪を赦し、/苦難のときに助けてくださる。

 

12 臆病な者、怠惰な者、/二またをかける罪人は、禍いだ。

 

13 無気力な者は、禍いだ。彼には信念がない。

  だから、彼には主の守りはない。

 

14 忍耐を捨てた者は、禍いだ。

  主の裁きの時には、どうするつもりなのか。

 

15 主を畏れる人は、主の掟に背かない。

  主を愛する人は、主の道を歩み続ける。

 

 16 主を畏れる人は、主を喜ばせようと心がけ、/

  主を愛する人は、律法を喜んで守る。

 

 17 主を畏れる人は、常に心の備えをし、/

  主の前で、自らへりくだる。

 

 18 「わたしたちは、自分を、人の手にではなく、/

   主の御手にゆだねます。 主の憐れみは、/

   その尊厳と同じく、偉大なのですから。」

 

 

 

 

シラ書 コプト教会英語訳

Chapter 2

 

1 

Son, when thou comest to the service of God, stand in justice and in fear, and prepare thy soul for temptation.

 

2

Humble thy heart, and endure: incline thy ear, and receive the words of understanding: and make not haste in the time of clouds.

 

3

Wait on God with patience: join thyself to God, and endure, that thy life may be increased in the latter end.

 

4

Take all that shall be brought upon thee: and in thy sorrow endure, and in thy humiliation keep patience.

 

5

For gold and silver are tried in the fire, but acceptable men in the furnace of humiliation.

 

6

Believe God, and he will recover thee: and direct thy way, and trust in him. Keep his fear, and grow old therein.

 

7

Ye that fear the Lord, wait for his mercy: and go not aside from him, lest ye fall.

 

8

Ye that fear the Lord, believe him: and your reward shall not be made void.

 

9

Ye that fear the Lord, hope in him: and mercy shall come to you for your delight.

 

10

Ye that fear the Lord, love him, and your hearts shall be enlightened.

 

11

My children behold the generations of men: and know ye that no one hath hoped in the Lord, and hath been confounded.

 

12

For who hath continued in his commandment, and hath been forsaken? or who hath called upon him, and he despised him?

 

13

For God is compassionate and merciful, and will forgive sins in the day of tribulation: and he is a protector to all that seek him in truth.

   

14

Woe to them that are of a double heart and to wicked lips, and to the hands that do evil, and to the sinner that goeth on the earth two ways.

 

15

Woe to them that are fainthearted, who believe not God: and therefore they shall not be protected by him.

 

16

Woe to them that have lost patience, and that have forsaken the right ways, and have gone aside into crooked ways.

 

17

And what will they do, when the Lord shall begin to examine?

 

 

 

18

They that fear the Lord, will not be incredulous to his word: and they that love him, will keep his way.

 

19

They that fear the Lord, will seek after the things that are well pleasing to him: and they that love him, shall be filled with his law.

 

20

They that fear the Lord, will prepare their hearts, and in his sight will sanctify their souls.

 

21

They that fear the Lord, keep his Commandments, and will have patience even until his visitation,

 

22

Saying: If we do not penance, we shall fall into the hands of the Lord, and not into the hands of men.

 

23

For according to his greatness, so also is his mercy with him.

 

 

  

 シラ書集会の書

 

 第3章

 

 1 子供たちよ、/

     父の戒めに耳を傾け、それを守れ。

     そうすれば、つつがなく暮らせる。

 

  2 主は、子に対する権威を父に授け、/

     子が母の判断に従う義務を定めておられる。

 

  3 父を尊べば、お前の罪は償われ、

 

  4 同じく、母を敬えば、富を蓄える。

 

  5 父を尊べば、いつの日か、/

     子供たちがお前を幸せにしてくれる。

     主は、必ず祈りを聞き入れてくださる。

  

 6 父を敬う者は、長寿に恵まれ、/

     主に従う者は、母を安心させる。

 

  7 〔主を畏れる人は、父を尊び、〕/

     僕が主人に仕えるように、両親に仕える。

 

  8 言葉と行いをもって、父を尊敬せよ。

     そうすれば、父から祝福を受ける。

 

  9 父の祝福は、子供たちの家を堅固なものとし、/

     母の呪いは、子供たちの家の土台を覆す。

 

 10 父の名誉を傷つけてまで、/

      自分の栄誉を求めるな。

     父の不名誉は、お前の栄誉とはならない。

 

 11 父親を敬うこと、これこそ人間の栄誉なのだ。

     母親を侮ること、それは子供にとって恥である。

 

 12 子よ、年老いた父親の面倒を見よ。

     生きている間、彼を悲しませてはならない。

 

 13 たとえ彼の物覚えが鈍くなっても、/

      思いやりの気持を持て。

     自分が活力にあふれているからといって、/    

     彼を軽蔑してはならない。

 

 14 主は、父親に対するお前の心遣いを忘れず、/

       罪を取り消し、お前を更に高めてくださる。

 

  15 お前が苦難に遭うとき、/

       主は、その心遣いを思い出してくださる。

       お前の罪は、晴れた日の霜のように/

       解け去るであろう。

 

 16 父を見捨てる者は、神を冒涜する者、同じく/

       母を怒らせる者は、主に呪われている者。

  

 17  子よ、何事をなすにも柔和であれ。

     そうすれば、施しをする人にもまして愛される。

 

 18 偉くなればなるほど、自らへりくだれ。

   そうすれば、主は喜んで受け入れてくださる。

  19 〔身分の高い人や著名な人は多い。

     しかし、神の奥義は柔和な人に現される。〕

 

 20 主の威光は壮大。

     主はへりくだる人によってあがめられる。

 

 21 お前の力に余ることを理解しようとするな。

     また、手に負えないことを探究しようとするな。

 

 22 お前のために定められていること、/

    それを熟慮せよ。

     お前に示されていないことを知る必要はない。

 

 23 できないことに手を出すな。

     お前に示されたことは、/

     既に人間の理解を超えたものなのだから。

 

 24 多くの者が早合点して道を誤り、/

     誤った推測で判断をゆがめてしまった。

 

 25 〔目がなければ、光を見ることはできない。

     知識がないのに、知ったかぶりをするな。〕

 

  26 心のかたくなな者は、晩年になって苦しむ。

     危険を好む者は、それによって身を滅ぼす。

 

 27 心のかたくなな者は、重荷を負って悩み苦しむ。

     罪人は、罪に罪を重ねる。

 

 27 高慢な者が被る災難は、手の施しようがない。

     彼の中には悪が深く根を下ろしている。

 

 29 賢者の心は、格言を思い巡らし、/

     知者の耳は、格言を熱心に聴く。

 

 30 水が燃え盛る火を消すように、/

     施しの業は、罪を償う。

 

 31 好意に報いることは、自分の将来のためになる。

     困難に陥ったときに、支えが与えられる。

 

  シラ書 コプト教会英語訳 

Chapter 3

 

 1 

The sons of wisdom are the church of the just: and their generation, obedience and love.

 2

Children, hear the judgment of your father, and so do that you may be saved.

 3

For God hath made the father honourable to the children: and seeking the judgment of the mothers, hath confirmed it upon the children.

 4

He that loveth God, shall obtain pardon for his sine by prayer, and shall refrain himself from them, and shall be heard in the prayer of days.

 5

And he that honoureth his mother is as one that layeth up a treasure.

 6

He that honoureth his father shall have joy in his own children, and in the day of his prayer he shall be heard.

 7

He that honoureth his father shall enjoy a long life: and he that obeyeth the father, shall be a comfort to his mother.

 8

He that feareth the Lord, honoureth his parents, and will serve them as his masters that brought him into the world.

 9

Honour thy father, in work and word, and all patience,

10

That a blessing may come upon thee from him, and his blessing may remain in the latter end.

11

The father's blessing establisheth the houses of the children: but the mother's curse rooteth up the foundation.

12

Glory not in the dishonour of thy father: for his shame is no glory to thee.

13

For the glory of a man is from the honour of his father, and a father without honour is the disgrace of the son.

14

Son, support the old age of thy father, and grieve him not in his life;

15

And if his understanding fail, have patience with him, and despise him not when thou art in thy strength: for the relieving of the father shall not be for- gotten.

16

For good shall be repaid to thee for the sin of thy mother.

 

 

 17

And in justice thou shalt be built up, and in the day of affliction thou shalt be remembered: and thy sine shall melt away as the ice in the fair warm weather.

   

18

 Of what an evil fame is he that forsaketh his father: and he is  cursed of God that angereth his mother.

 

 19 

My son, do thy works in meekness, and thou shalt be beloved above the glory of men.

 

 20

The greater thou art, the more humble thyself in all things, and thou shalt find grace before God:

 

 21

For great is the power of God alone, and he is honoured by the humble.

 

 22

Seek not the things that are too high for thee, and search not into things above thy ability: but

the things that God hath commanded thee, think on them always, and in many of his works be

 not curious.

 

 23

For it is not necessary for thee to see with thy eyes those things that are hid.

 

 24

In unnecessary matters be not over curious, and in many of his works thou shalt not be inquisitive.

 

 25

For many things are shewn to thee above the understanding of men.

 

 26

And the suspicion of them hath deceived many, and hath detained their minds in vanity.

 

 

27

A hard heart shall fear evil at the last: and he that loveth danger shall perish in it.

 

28

A heart that goeth two ways shall not have success, and the perverse of heart shall be scandalized therein.

 

29

A wicked heart shall be laden with sorrows, and the sinner will add sin to sin.

 

30

The congregation of the proud shall not be healed: for the plant of wickedness shall take root in them, and it shall not be perceived.

 

31

The heart of the wise is understood in wisdom, and a good ear will hear wisdom with all desire.

 

32

A wise heart, and which hath under- standing, will abstain from sine, and in the works of justice shall have success.

 

33

Water quencheth a flaming fire, and alms resisteth sins:

 

34

And God provideth for him that sheweth favour: he remembereth him afterwards, and in the time of his fall he shall find a sure stay.

  

 

第4章

 

 

1.    子よ、貧しい人の生活を脅かすな。

 

乞い求めるまなざしの人をじらすな。

 

2.    飢えている人を悲しませるな。

 

途方に暮れている人を怒らせるな。

 

3. いらだっている人を更に苦しめるな。

 

乞い求める人に与えることをためらうな。

 

4.  悩んで助けを求める人を拒むな。

 

貧しい人から顔を背けるな。

 

5.  物乞いする人から目を背けるな。

 

お前を呪う口実を彼に与えるな。

 

6.  その人が恨みを込めてお前を激しく呪えば、

 

造り主は、彼の願いを聞き入れられるから。

 

7.  会堂では、人々から好意を持たれるようにせよ。

 

権威ある者には、頭を低くせよ。

 

8.  貧しい人の訴えに耳を傾け、

 

穏やかにそして柔和に、答えるがよい。

 

9.  不当に扱われている者を

          加害者の手から救い出せ。

 

勇気をもって決断せよ。

 

10.  孤児たちに対しては父親のようになり、

 

孤児たちの母親に対しては、

         その夫がするように手助けするがよい。

 

そうすれば、いと高き方はお前を子と見なし、

 

母親以上にお前を愛してくださる。

 

 

11.  知恵は、それに従う子らを高め、

 

これを追い求める者を助ける。

 

12.  知恵を愛する者は、命を愛する者。

 

朝早く起きて知恵を求める者は、

     

       喜びに満たされる。

 

13.  知恵を得る者は、誉れを受け継ぎ、

 

行く先々で、主から祝福される。

 

14.  知恵に仕える者は、聖なる方に奉仕する者。

 

知恵を愛する者は、主から愛される。

 

15.  知恵に聞き従う者は、諸国民を正しく裁き、

 

知恵に心を向ける者は、安らかに暮らす。

 

16.  知恵を信頼すれば、知恵が与えられ、

 

子孫もその知恵を受け継ぐ。

 

17.  知恵は、最初、お前を険しい道に連れて行き、

 

恐れの気持を抱かせて、おじけさせる。

 

知恵の試練は、お前を激しく苦しめる。

 

知恵は、お前を信頼するまで、

 

数々の要求を突きつけて、お前を試みる。

18.  だがすぐに、知恵は再びお前のもとに来て、

お前を喜ばせ、その真意を明らかに示す

19.  しかし、お前が道をそれるなら、

       知恵はお前を見捨て、

 

お前が破滅していくにまかせる。

20.  正しく時を見極め、悪から身を守れ。

いたずらに自分を恥じることはない。

21.  罪をもたらす恥じらいもあり、

名誉と尊敬に値する恥じらいもあるのだから。

22.  自分の気持を裏切ってまで、他人にこびるな。

いたずらに恥じて身の破滅をもたらすな。

23.  必要なときに発言するのをためらうな。

〔お前の知恵を、見栄のために隠してはならない。〕

24.  知恵は、言葉によって知られ、

教訓は、語る言葉によって理解されるのだから。

25.  真理に逆らって発言するな。

自分の無学を恥じよ

26.  罪を告白することを恥じるな。

川の流れを無理にせき止めてはならない。

27.  愚か者の言いなりになるな。

権力者にへつらうな。

27.  真理のためには、命がけで戦え。

主なる神も、お前に味方して戦ってくださる。

29.  軽はずみな口を利くな。

仕事を怠けたり、なげやりにしたりするな。

30.  家の中で獅子のようにふるまうな。

自分の家の召し使いたちを気まぐれに扱うな。

31.  もらうときに手を出すのなら、  

返すときには出ししぶるな。

  

(コプト教会英訳対照)

Chapter 4

 

1

Son, defraud not the poor of alms, and turn not away thy eyes from the poor.

 

2

Despise not the hungry soul: and provoke not the Boor in his want.

 

3

Afflict not the heart of the needy, and defer not to give to him that is in distress.

 

4

Reject not the petition of the afflicted: and turn not away thy face from the needy.

 

5

Turn not away thy eyes from the poor for fear of anger: and leave not to them that ask of thee to curse thee behind thy back.

 

6

For the prayer of him that curseth thee in the bitterness of his soul, shall be heard, for he that made him will hear him.

 

7

Make thyself affable to the congregation of the poor, and humble thy soul to the ancient, and bow thy head to a great man.

 

8

Bow down thy ear cheerfully to the poor, and pay what thou owest, and answer him peaceable words with mildness.

 

9

Deliver him that suffereth wrong out of the hand of the proud: and be not fainthearted in thy soul

.

10

In judging be merciful to the fatherless as a father, and as a husband to their mother.

 

11

And thou shalt be as the obedient son of the most High, and he will have mercy on thee more than a mother.

 

12

Wisdom inspireth life into her children, and protecteth them that seek after her, and will go before them in the way of justice.

 

13

And he that loveth her, loveth life: and they that watch for her, shall embrace her sweetness.

 

14

They that hold her fast, shall inherit life: and whithersoever she entereth, God will give a blessing.

 

15

They that serve her, shall be servants to the holy one: and God loveth them that love her.

 

16

He that hearkeneth to her, shall judge nations: and he that looketh upon her, shall remain secure.

 

17

If he trust to her, he shall inherit her, and his generation shall be in assurance.

 

18

For she walketh with him in temptation, and at the first she chooseth him.

 

19

She will bring upon him fear and dread and trial: and she will scourge him with the affliction of her discipline, till she try him by her laws, and trust his soul.

 

 

20

Then she will strengthen him, and make a straight way to him, and give him joy,

 

21

And will disclose her secrets to him, and will heap upon him treasures of knowledge and understanding of justice.

 

22

But if he go astray, she will forsake him, and deliver him into the hands of his enemy.

 

23

Son, observe the time, and fly from evil.

 

24

For thy soul be not ashamed to say the truth.

 

25

For there is a shame that bringeth sin, and there is a shame that bringeth glory and grace.

 

26

Accept no person against thy own person, nor against thy soul a lie.

 

27

Reverence not thy neighbour in his fall:

 

28

And refrain not to speak in the time of salvation. Hide not thy wisdom in her beauty.

 

29

For by the tongue wisdom is discerned: and understanding, and knowledge, and learning by the word of the wise, and steadfastness in the works of justice.

 

30

In nowise speak against the truth, but be ashamed of the lie of thy ignorance.

 

31

Be not ashamed to confess thy sins, but submit not thyself to every man for sin.

 

32

Resist not against the face of the mighty, and do not strive against the stream of the river.

 

33

Strive for justice for thy soul, and even unto death fight for justice, and God will overthrow thy enemies for thee.

 

34

Be not hasty in thy tongue: and slack and remiss in thy works.

 

35

Be not as a lion in thy house, terrifying them of thy household, and oppressing them that are under thee.

 

36

Let not thy hand be stretched out to receive, and shut when thou shouldst give.

 

  

第5章

 高慢になるな

 

1.   自分の財産を頼みとするな。「わたしは、何でも思いのままだ」と言うな。

 

2.   本能と自分の力に引きずられ、/欲望のままに生きてはいけない。

 

3.   「だれもわたしを支配できない」と言うな。主は必ずお前に復讐なさるだろう。

 

4.   「罪を犯したが、何も起こらなかった」と言うな。主は忍耐しておられるのだ。

 

5.   どうせ罪は贖われるのだからといい気になって、/罪に罪を重ねてはならない。

 

6.   「主の憐れみは豊かだから、/数多くのわたしの罪は赦される」と言うな。主は、憐れみだけでなく、怒りをも持ち、/その激しい怒りは罪人たちの上に下る。

 

7.   速やかに主のもとに立ち帰れ。一日、もう一日と、引き延ばしてはいけない。主の怒りが、突然やって来て、/裁きの時に、お前を滅ぼしてしまうからだ。

 

8.   人を惑わす財産を頼みとするな。いざというとき、何の役にも立たない。

 

誠実と自制

 

9.   風向きを考えずにもみ殻をふるい分けるな。どんな道でも歩いてよいというわけではない。 それは、二枚舌の罪人がすることだ。

 

10.      自分の見解には確信を抱き、/発言には一貫性を持たせよ

 

11.       人の言葉には、速やかに耳を傾け、/答えるときは、ゆっくり時間をかけよ。

 

12.       はっきりした見解があれば、隣人に答えよ。さもなければ、口に手を当てて何も言うな。

 13.       名誉、不名誉も言葉しだい、/舌は身を滅ぼすもととなる。

 

 14.       陰口をたたく者と呼ばれるな。舌で人を陥れるな。盗人には辱めが、/

 

二枚舌の者には激しい非難が浴びせられる。

 

15.       大事にも小事にも細心の注意を払え。

  

 

コプト教会 英語訳聖書対照

 

Chapter 5

 

1

Set not thy heart upon unjust possessions, and say not: I have enough to live on: for it shall be of no service in the time of vengeance and darkness.

2

Follow not in thy strength the desires of thy heart:

3

And say not: How mighty am I? and who shall bring me under for my deeds? for God will surely take revenge.

4

Say not: I have sinned, and whet harm hath befallen me? for the most High is a patient rewarder.

5

Be not without fear about sin forgiven, and add not sin upon sin:

6

And say not: The mercy of the Lord is great, he will have mercy on the multitude of my sins.

7

For mercy and wrath quickly come from him, and his wrath looketh upon sinners.

8

Delay not to be converted to the Lord, and defer it not from day to day.

9

For his wrath shall come on a sudden, and in the time of vengeance he will destroy thee.

10

Be not anxious for goods unjustly gotten: for they shall not profit thee in the day of calamity and revenge.

11

Winnow not with every wind, and go not into every way: for so is every sinner proved by a double tongue.

12

Be steadfast in the way of the Lord, and in the truth of thy judgment, and in knowledge, and let the word of peace and justice keep with thee.

13

Be meek to hear the word, that thou mayst understand: and return a true answer with wisdom.

14

If thou have understanding, answer thy neighbour: but if not, let thy hand be upon thy mouth, lest thou be surprised in an unskilful word, and be confounded.

15

Honour and glory is in the word of the wise, but the tongue of the fool is his ruin.

16

Be not called a whisperer, and be not taken in thy tongue, and confounded.

17

For confusion and repentance is upon a thief, and an evil mark of disgrace upon the double tongued, but to the whisperer hatred, and enmity, and reproach.

18

Justify alike the small and the great.

 

6

  

(誠実と自省 5章より続き)

 

6:1 友となるべきときに、裏切って敵となるな。悪評が立ち、恥とそしりを受けるからだ。それは、二枚舌の罪人がすることだ。

 

6:2 自分勝手な思いで高ぶるな。さもないと、暴れる雄牛のように力尽きる。

  

6:3 お前は葉を食い尽くし、実を台なしにし、/そして、自分自身を枯れ木のようにしてしまう。

  

6:4 激情は、これを抱く者を滅ぼし、/敵の物笑いの種とする。

 

 

誠実な友

 

6:5 のどの麗しい声は、友人を増やし、/舌のさわやかな語りかけは、/愛想のよい返事を増やす。

 

6:6 多くの人々と親しく挨拶を交わせ。だが、相談相手は千人のうち一人だけに限れ。

 

6:7 友をつくるときは、試してからにせよ。すぐに彼を信頼してはいけない。

 

6:8 都合のよいときだけ友となり、/苦難のときには、離れてしまう者がいる。

 

6:9 また、心変わりして敵となる友もいて、/争いでお前が吐いた悪口を暴露する。

 

6:10 食事のときだけ友であり、/苦難のときには、離れてしまう者がいる。

 

6:11 お前のはぶりがよいと、お前のようにふるまい、/お前の召し使いたちになれなれしくする。

 

6:12 しかし、お前が落ちぶれると、背を向け、/お前の目から身を隠す。

 

6:13 敵からは遠ざかれ。友達には気をつけよ。

 

6:14 誠実な友は、堅固な避難所。その友を見いだせば、宝を見つけたも同然だ。

 

6:15 誠実な友は、何ものにも代え難く、/そのすばらしい値打ちは計り難い。

 

6:16 誠実な友は、生命を保つ妙薬。主を畏れる者は、そのような友を見いだす。

 

6:17 主を畏れる者は、真の友情を保つ。友もまた、彼と同じようにふるまうから。

 

 

知恵に近づけ

 

6:18 子よ、若いときから教訓を受け入れよ。白髪になるまでに、知恵を見いだすように。

 

6:19 耕し、種蒔く農夫のように、知恵に近づき、/その豊かな実りを待ち望め。知恵を得るには、しばらく苦労するが、/やがて、その実を味わうだろう。

 

6:20 教訓を受け入れない者にとって、/知恵はなんと忌まわしいことか。愚かな者は、知恵の中に踏みとどまれない。

 

6:21 力試しの石のように、/知恵は重荷となって彼を苦しめ、/彼はすぐにそれをほうり出す。

 

6:22 知恵は、その名のとおり奥深く、/多くの人にはとらえにくい。

 

6:23 子よ、耳を傾けてわたしの意見に従え。わたしの忠告を拒んではならない。

 

6:24 足に知恵の足枷をかけ、/首に知恵の首輪をはめよ。

 

6:25 肩を低くし、知恵を担え。その束縛にいらだつな。

 

6:26 心を尽くして知恵に近づき、/力を尽くして知恵の道を歩み続けよ。

 

6:27 足跡を追って、知恵を探せ。そうすれば、知恵が見つかるだろう。しっかりつかんだら、それを手放すな。

 

6:28 ついには、知恵に憩いを見いだし、/知恵は、お前にとって、喜びに変わるだろう。

 

6:29 知恵の足枷は、確かな避難所となり、/首輪は、華麗な衣となる。

 

6:30 知恵は金の飾りを着け、/その束縛の鎖は、青紫のひもとなる。

 

6:31 お前は、華麗な衣として、知恵をまとい、/喜びの冠として、それをかぶるだろう。

 

6:32 子よ、望むなら、教訓を体得でき、/心がければ、賢くなれるのだ。

 

6:33 喜んで聞けば、多くのことを学び、/耳を傾ければ、知恵ある者となれるのだ。

 

6:34 長老たちの集いに入って、その中に立ち、/彼らの知恵を頼みとせよ。

 

6:35 神に関する話には、進んで耳を傾け、/洞察を秘めた格言は、聞き漏らすな。

 

6:36 洞察に富んだ人に出会ったら、/朝早くからその人のもとへ行き、/戸口の敷石がすり減るほど、足しげく通え。

 

6:37 常に、主の命令を心に留め、/主の掟に専念せよ。主御自身が、お前の心を強め、/お前の切望する知恵を与えてくださる。

 7章

  

悪を行うな

  

7:1 悪を行うな。そうすれば、悪はお前を襲わない。

  

7:2 不正から遠ざかれ。そうすれば、不正がお前を避けるだろう。

  

7:3 不正の畑に種を蒔くな。七倍の不正の実を刈り取るだけだ。

  

7:4 権力の座を、主に乞い求めるな。栄光の地位を、王に乞い求めるな。

  

7:5 主の前で、自分の正しさを主張するな。王の前で、知恵をひけらかすな。

  

7:6 不正を取り除く力がなければ、/裁判官を志すな。さもないと、権力者の顔色をうかがい、/公平な裁きができなくなる。

  

7:7 町の住民に対して過ちを犯すな。また、民衆の前で面目を失うな。

  

7:8 過ちを二度繰り返すな。一度の過ちでさえ、罰を免れないからだ。

  

7:9 次のように言ってはならない。「神はわたしの数多い献げ物を顧みてくださる。わたしが、いと高き神に献げ物をささげれば、/必ず、受け入れてくださる。」

  

7:10 ためらいながら祈ってはならない。施しをする機会を逃してはならない。

  

7:11 心を痛めている人をあざ笑うな。人を低め、かつ高める方がおられるのだから。

  

7:12 兄弟に偽り事をたくらむな。友人にも、そのようなことはするな。

  

7:13 どんな偽りも口にしてはならない。うそが身につくと、ろくなことにはならない。

  

7:14 長老たちの集いの場では、無駄口を利くな。祈るときには、くどくどと繰り返すな。

  

7:15 骨の折れる仕事や、/いと高き方が定められた畑仕事を、/嫌ってはならない。

  

7:16 罪人の仲間に加わってはならない。神の裁きは速やかに下ることを、心に留めよ。

  

7:17 どこまでも謙遜であれ。畏れを知らぬ者には、火と蛆の刑罰が下る。

 

 

友人と家族

  

7:18 金のために友を裏切るな。オフィルの黄金のために真の兄弟を裏切るな。

  

7:19 賢く良い女をめとる機会を逃すな。彼女のもたらす喜びは、黄金にまさる。

  

7:20 誠実に働く召し使いや、/懸命に尽くす雇い人を、冷遇するな。

  

7:21 賢い召し使いを心から愛し、/その自由を奪ってはならない。

  

7:22 家畜がいれば、よくその世話をせよ。お前の役に立つのだから、ずっと飼い続けよ。

  

7:23 子供がいれば、彼らを教育し、/幼いときから、厳しくしつけよ。

  

7:24 娘がいれば、その体に心を配れ。彼女らに甘い顔ばかりしてはならない。

  

7:25 娘を嫁がせよ。それで大仕事を終えたのだ。だが、娘は賢い男に嫁がせよ。

  

7:26 心に適う妻がいれば、彼女を追い出すな。気に入らない妻には、心を許すな。

  

7:27 心を尽くして父を敬い、/また、母の産みの苦しみを忘れてはならない。

  

7:28 両親のお陰で今のお前があることを銘記せよ。お前は両親にどんな恩返しができるのか。

 

 

祭司に対する尊敬

  

7:29 心を尽くして主を敬い、/主の祭司をあがめよ。

  

7:30 力を尽くしてお前の造り主を愛し、/主に仕える人々をなおざりにするな。

  

7:31 主を畏れ、祭司を尊べ。規定に従って、祭司にその分け前を納めよ。すなわち、初物、賠償の献げ物、/いけにえの動物の肩の肉、/清めのいけにえ、聖なる初物の献げ物。

  

 

貧しい人と悲しむ人

  

7:32 貧しい人に援助の手を差し伸べよ。そうすれば、お前は豊かに祝福される。

  

7:33 生きとし生けるもの、すべてに恵みを施せ。また、死者にも思いやりを示せ。

  

7:34 泣く人と共に泣き、/悲しむ人と共に悲しめ。

  

7:35 病人を見舞うのをためらうな。それによって、お前は愛されるようになる。

  

7:36 何事をなすにも、/お前の人生の終わりを心に留めよ。そうすれば、決して罪を犯すことはない。 

8章

 

 

良識ある行為

 

8:1 権力者と争うな。彼の手に陥らないともかぎらない。

 

8:2 金持ちとけんかをするな。彼は金にものを言わせ、/お前に立ち向かわないともかぎらない。黄金は多くの人々を滅ぼし、/王たちの心を迷わせた。

 

8:3 口数の多い者と争うな。火に薪をくべることにならないともかぎらない。

 

8:4 粗野な者をからかうな。彼はお前の先祖を辱めるかもしれない。

 

8:5 罪から離れようとしているなら、/もうその人をとがめてはならない。わたしたちは皆、/罰に値する者であることを思え。

 

8:6 年寄りだからといって、軽蔑するな。わたしたちも、いずれは老人になるのだから。

 

8:7 他人の死を喜ぶな。わたしたちは皆、死すべき者であることを思え。

 

8:8 知恵ある人の話をなおざりにせず、/その格言に心を留めよ。そうすれば、そこから教訓を学び、/王に仕えるすべを身につけることができる。

 

8:9 老人たちの話を聞き逃すな。彼らも、その先祖たちから学んだのだ。そうすれば、そこから知識を学び、/必要なときに答えることができる。

 

8:10 罪人の情欲の炭に火をつけるな。その燃える炎で、やけどをしないともかぎらない。

 

8:11 傲慢な人の挑発に乗るな。彼は、お前の言葉じりをとらえて陥れようと、/待ち構えているかもしれないから。

 

8:12 お前より力のある人に金を貸してはならない。貸したら最後、失ったものと思え。

 

8:13 お前の力量を超えて保証をしてはならない。保証をするなら、自分が返済する覚悟を持て。

 

8:14 裁判官を相手に訴訟を起こしてはならない。彼の名誉を重んじる判決が下されるから。

 

8:15 向こう見ずな人間と一緒に旅をするな。お前はひどい災難に/悩まされないともかぎらない。彼は勝手気ままにふるまい、/その愚かな行動がもとで、/お前も一緒に命を落とすことになる。

 

8:16 短気な人間と争ったり、/一緒に荒れ野を歩いたりしてはならない。彼は、血を流すことなど何とも思わず、/だれの助けも得られないところで、/お前を打ち倒してしまうから。

 

8:17 愚か者と相談するな。彼は秘密を守ることができないのだから。

 

8:18 内密にすべきことを他人の前で公にするな。どんな結果が生じるか分からないのだから。

 

8:19 相手構わず、人に心を打ち明けるな。また、相手構わず、人から恩を受けるな。 

 9章

 

女性について

 

9:1 愛する妻に、やきもちをやくな。お前を傷つける悪知恵を、彼女に教えるだけだ。

 

9:2 女にうつつを抜かして、/彼女の言いなりになるな。

 

9:3 ふしだらな女に近づくな。彼女の罠に、はまり込まないともかぎらない。

 

9:4 女の歌い手となじみになるな。彼女の手中に陥らないともかぎらない。

 

9:5 おとめをじっと見つめるな。慰謝料を払わされるはめに陥るかもしれない。

 

9:6 娼婦にうつつを抜かすな。さもないと、財産をつぶしてしまう。

 

9:7 街角に立って辺りを見回すな。また、町の裏通りを歩き回るな。

 

9:8 見目麗しい女から目をそらせ。人妻の美しさに見とれるな。多くの者が女の美しさに惑わされ、/愛欲を火のように燃え上がらせる。

 

9:9 結婚した女とは同席するな。また、彼女と酒を酌み交わして、楽しむな。心が彼女に奪われ、/愛欲にたぎる血で身を滅ぼさないともかぎらない。

 

 

 

人間関係

 

9:10 古くからの友人をなおざりにするな。彼は、新しい友人に、はるかにまさる。新しい友は、新しいぶどう酒。古くなるほど、味わい深く飲めるのだ。

 

9:11 罪人の成功をねたむな。彼にどんな破滅が待っているか、/お前は知らないのだ。

 

9:12 不信仰な人の成功をうらやむな。彼らは必ず罰せられて陰府に行くものと心得よ。

 

9:13 命を奪う力を持つ権力者から遠ざかれ。そうすれば、死の恐怖におののくことはない。たとえ彼に近づ

 

いたとしても、過ちを犯すな。さもないと、命を奪われてしまう。お前は、仕掛けられた罠の間を通り、/町の城壁の上を歩き回っているものと知れ。

 

9:14 できるかぎり隣人を見極め、/知恵ある人と相談せよ。

 

9:15 聡明な人と語り合い、/専ら、いと高き方の律法を話題とせよ。

 

9:16 正しい人たちと食事を共にし、/主を畏れることを、お前の誇りとせよ。

 

9:17 職人は、その作品によって称賛され、/知恵ある為政者は、/その言葉によって称賛される。

 

9:18 口数の多い者は、町中で忌み嫌われ、/口の軽い者は、その言葉によって憎まれる。 

 10章

 

統治者について

 

10:1 知恵ある統治者は、その民を教育し、/聡明な人の政治は、秩序あるものとなる。

 

10:2 公務に携わる人たちは、民の統治者に倣い、/町の住民は皆、その首長に倣う。

 

10:3 教養に欠けた王は、その民を滅ぼし、/実権を握る者の聡明さは、町を立派に築く。

 

10:4 この世の主権は、主の御手にある。主は、時に応じて、ふさわしい人物を起こされる。

 

10:5 人の成功は、主の御手にある。立法者に栄誉を授けるのも、主である。

  

 

高慢について

 

10:6 隣人のどんな不正な仕打ちにも、憤りを抱くな。また、決して横柄なふるまいをしてはならない。

 

10:7高慢は、主にも人にも嫌われ、/不正は、そのいずれからも非難される。

 

10:8 覇権は、民族から民族へと移り行く。その原因は、不正と傲慢と富である。金銭欲の強い者こそ、最も不法な者だ。彼は、全く守銭奴になりきってしまう。

 

10:9 土くれや灰にすぎぬ身で、なぜ思い上がるのか。だからわたしは、彼のはらわたを、/生きているときに、つかみ出してやった。

 

10:10 長患いは、医者の手に負えず、/今日、王であっても、明日は命を奪われる。

 

10:11 人は死んでしまうと、すべてを失い、/爬虫類と野獣と蛆虫の餌食になるだけだ。

 

10:12 高慢の初めは、主から離れること、/人の心がその造り主から離れることである。

 

10:13 高慢の初めは、罪である。高慢であり続ける者は、/忌まわしい悪事を雨のように降らす。それゆえ、主は想像を絶する罰を下し、/彼らを滅ぼし尽くされた。

 

10:14 主は、支配者たちをその王座から降ろし、/代わりに、謙遜な人をその座につけられた。

 

10:15 主は、諸国民を根こそぎにし、/代わりに、身分の低い人々を植え付けられた。

 

10:16 主は、諸国民の領土を覆し、/地の基まで破壊された。

 

10:17 主は、ある人々を取り除いて打ち滅ぼし、/彼らについての記憶を地上から消し去られた。

 

10:18 人間は、高慢であってはならず、/女から生まれた者は、/激しい憤りを抱いてはならないのだ。

 

 

尊敬に値する者

 

10:19 どんな被造物が尊敬に値するか。人類だ。どんな人が尊敬に値するか。主を畏れる人だ。どんな被造物が尊敬に値しないか。人類だ。どんな人が尊敬に値しないか。掟を破る者だ

 

10:20 仲間の間では、権力のある者が尊敬され、/主の前では、主を畏れる者が尊ばれる。

 

10:21 主を畏れることは、/主に受け入れられることの初め、/強情と高慢は、主に拒まれることの初めである。

 

10:22 改宗者や外国人や貧しい人、/彼らの誇りは、主を畏れることである。

 

10:23 聡明な貧しい人をさげすむのは、/正しいことではない。罪ある人をほめたたえるのは、/ふさわしいことではない。

 

10:24 地位の高い人や判事や権力者は、栄誉を受ける。だが、主を畏れる者は、彼らにまさる者なのだ。

 

10:25 自由市民が知恵ある奴隷に奉仕しても、/分別ある人なら、それをとやかくは言わない。

 

 

謙遜と誇り

 

10:26 仕事をするとき、理屈をこねるな。困っているとき、見栄を張るな。

 

10:27 働いて、すべてに満ち足りている人の方が、/パンを得る手だてを持たず、/見栄を張って生きる人にまさる。

 

10:28 子よ、慎み深く、自らに誇りを持ち、/自分を、あるがままに、正しく評価せよ。

 

10:29 自分自身を汚す者を、/だれが正しい人と認めてくれるだろうか。自分自身を軽んじる者を、/だれが重んじてくれるだろうか。

 

10:30 貧しい人は、その知識によって尊ばれ、/金持ちは、その富によって尊ばれる。

 

10:31 貧しくても尊ばれる人は、富を得れば、/どれほど尊ばれるだろうか。金持ちでも軽蔑される人は、貧しくなれば、/どれほど軽蔑されるだろうか。

 11章

 

 

軽率な判断をするな

 

11:1 知恵があれば、身分の低い者でも頭角を現し、/高貴な人々と肩を並べることができる。

 

11:2 姿形が美しいからといって、人を褒めそやすな。また、外見によって人を毛嫌いするな。

 

11:3 蜜蜂は、羽で飛ぶもののうち小さい方だが、/その作る蜜は、最高に甘い。

 

11:4 身に着けている衣服を誇るな。栄誉を受けるときでも、おごり高ぶるな。主のなさることは、計り知れず、/その御業は、人々に隠されているからだ。

 

11:5 力を誇る多くの支配者が土下座するはめに陥り、/思いもよらぬ者が王冠をかぶることになった。

 

11:6 多くの権力者がひどい辱めを受け、/高名な者たちが異国の人の手に渡された。

 

11:7 よく調べないうちに、とがめてはならない。まず、じっくり考え、その後に叱れ。

 

11:8 よく聞かないうちに、答えてはならない。他人の話に割り込むな。

 

11:9 自分にかかわりのない事で、人と争うな。ならず者たちの言い争いに加わるな。

 

 

 

多くの事に手を出すな

 

11:10 子よ、あまり多くの事に手を出すな。何もかもしようとすれば、ひどい目に遭う。やり遂げようとしても、果たすことはできず、/逃げようとしても、逃げきれるものではない。

 

11:11 苦労し、難儀し、懸命に事を運ぼうとしても、/その人はかえってますます遅れてしまうものだ。

 

11:12 のろまで、助けを必要とし、/何もできず、貧しさにあえいでいる人もいる。しかし、主は、彼に目を注いで恵みを与え、/惨めな状態から引き上げ、

 

11:13 高めてくださった。そこで、多くの人々は彼を見て非常に驚いた。

 

11:14 善と悪、生と死、/貧困と富は、主が与えるもの。

 

11:15 知恵と悟り、それに律法の知識、/愛と善行の道、これらは、主が与えるもの。

 

11:16 迷いと闇とは、罪人と共に生じ、/悪は、それを誇る者と共にとどまる。

 

11:17 主の賜物は、信仰深い人と共にあり、/主の御心は、常に彼らを成功に導いてくださる。

 

11:18 生活を切り詰め、強欲に富を蓄える人もいる。だが、どんな報いがあると言うのか。

 

11:19 「これで安心だ。自分の財産で食っていけるぞ」と言っても、/それがいつまで続くのか知るよしもなく、/財産を他人に残して、死んでいく。

 

11:20 契約をしっかり守り、それに心を向け、/自分の務めを果たしながら年老いていけ。

 

11:21 罪人が仕事に成功するのを見て、驚きねたむな。主を信じて、お前の労働を続けよ。貧しい人を、たちどころに金持ちにすることは、/主にとって、いともたやすいことなのだ。

 

11:22 主の祝福こそ、信仰深い人の受ける報いなのだ。主は、幸せの花を、速やかに咲かせてくださる。

 

11:23 お前はこう言ってはならない。「今の自分は何の役に立つのだろう。今後役に立つとしたら、それは何だろう」と。

 

11:24 また、次のように言ってもならない。「今の自分は満ち足りている。今後どんな災害がふりかかるというのか」と。

 

11:25 人は、幸福なときには不幸を忘れ、/不幸なときには、幸福を思い出さない。

 

11:26 死に際して、生前の行状に応じて報いることは、/主にとって、いともたやすいことなのだ。

 

11:27 不幸に遭うと、すべての楽しみを忘れるが、/人の行いの評価は、その最期に明らかになる。

 

11:28 どんな人に対しても死を迎えるまでは、/その人のことを幸せだと言うな。人間は、その子供たちによって、/本当の姿が知られるのだ。

 

 

 

他人を家に入れるな

 

11:29 だれかれかまわず家に招き入れるな。悪賢い人間が、多くのたくらみをもって/うかがっているのだから。

 

11:30 高慢な人間の心は、/籠の中にいるおとりのうずらのようだ。密偵のように、お前を陥れようと/すきをうかがっている。

 

11:31 彼は、善を曲げて悪に変えようとねらっており、/申し分のない行いにさえ、非難を浴びせる。

 

11:32 わずかな火種で、炭は燃え盛る。罪人は、血を流そうとして、/はかりごとをめぐらしているのだ。

 

11:33 悪者に気をつけよ。悪事をたくらんでいるのだから。お前が傷つき、いつまでも苦しまないように。

 

11:34 他人を自分の家に同居させてみよ。もめごとでお前は頭を悩まし、/身内の者からも疎まれる。

 2

 

 

相手をわきまえよ

  

12:1 善い業をするときには、相手をわきまえよ。そうすれば、お前の善い行いは感謝される。

 

12:2 信仰深い人に善い業をなせ。そうすれば報いがある。たとえ彼から受けなくても、/いと高き方が報いてくださる。

 

12:3 悪事にしがみついている者や、/慈悲の心を持たず、施しをしない者には、/幸福はやって来ない。

 

12:4 信仰深い人に施せ。だが、罪人には援助するな。

 

12:5 謙遜な人に善い業をせよ。しかし、不信仰な者には施すな。不信仰な者には食べ物を拒み、何も与えるな。さもないと、彼はそれで力を得て、/お前に立ち向かって来るだろう。不信仰な者に施すあらゆる善い業は、/二倍の悪となってお前に返って来るだろう。

 

12:6 いと高き方御自身も、罪人を憎み、/不信仰な人にあだを返される。主は、報復の日まで、彼らを監視しておられる。

 

12:7 善人には与えよ。しかし、悪人には援助するな。

 

 

 

友と敵について

 

12:8 幸福なときには、真の友を見分けられない。不幸なときには、だれが敵かはっきりする。

 

12:9 人が幸福なときには、敵はねたみ、/不幸なときには、友でさえ離れていく。

 

12:10 決して敵を信用するな。彼の悪意は、緑青のように、人をむしばむ。

 

12:11 謙遜な態度をとり、腰を低くしてやって来ても、/用心して、彼を警戒せよ。彼に対するときは、鏡を磨くように自分を磨け。絶えず磨いていれば、/彼のさびで害を受けることはない。

 

12:12 彼を傍らに立たせるな。さもないと、お前を押しのけて、/お前の地位を奪うだろう。彼を右側に座らせるな。さもないと、お前の座をねらうだろう。そのときになって、わたしの言葉を悟り、/わたしが語った言葉を思い出しても、/後悔するだけだ。

 

12:13蛇使いが蛇にかまれ、/猛獣使いが獣にかまれたとしても、/だれが同情するだろうか。

 

12:14 罪人に近づき、/その悪にむしばまれる者も同じである。

 

12:15 彼は、お前がうまくいっているときには、/一緒にいるが、/落ちぶれたときには、離れ去ってしまう。

 

12:16敵は、口先では甘いことを言っても、/心ではお前を穴に陥れようとたくらんでいる。敵は、目に涙を浮かべても、/折さえあれば殺そうと、血に飢え渇いている。

 

12:17 災難がお前にふりかかると、/彼はお前の目の前に現れ、/助ける振りをして、お前の足もとをすくう。

 

12:18 彼は、うなずいたり、もみ手をしたりするが、/裏では陰口をまき散らし、顔つきを変える。 

 13章

 

 

金持ちとのつきあい

 

13:1 やにに触れば、手が汚れる。高慢な人と交われば、/高慢な人間になる。

 

13:2 手に余る重い物を持ち上げるな。お前よりも力や金のある者と交わるな。土鍋が鉄鍋とどうして仲間になれようか。土鍋は鉄鍋にぶつかると砕けてしまう。

 

13:3 金持ちは不正を働きながら、しかも、脅迫する。貧乏な人は不正を受けながら、/しかも、わびなければならない。

 

13:4 金持ちは、お前が役に立つかぎり、利用するが、/お前が困っているときは、見捨ててしまう。

 

13:5 お前に財産があると、親しげに寄って来て、/お前の財産を使い果たしても、平然としている。

 

13:6 お前を必要とするときには、お前をだまし、/ほほ笑みかけて、希望を持たせ、/うまい言葉を並べ立てて、/「お役に立つことはありませんか」と言う。

 

13:7 そして、ごちそうを振る舞って、お前を恐縮させ、/今度は二度も三度も搾り取り、/最後には、お前をあざ笑う。その後は、会っても知らぬ振りをし、/お前を無視して、顔を背ける。

 

13:8 用心せよ。だまされることのないように。自分の愚かさで落ちぶれることのないように。

 

 

 

権力者とのつきあい

 

13:9 権力者に招待されたら、一応遠慮せよ。そうすれば、ますます招いてくれるだろう。

 

13:10 深入りするな。深入りするとはねつけられる。だが、遠ざかっていてもいけない。忘れられてしまうから。

 

13:11 彼と対等に話ができるなどと、思い上がるな。彼が多くの言葉をかけてくれたからといって、/いい気になるな。はずむ話は、お前を試すためであり、/ほほ笑みながらもお前を探っているのだ。

 

13:12 彼は打ち明け話を心にとどめず、/情けを知らず、/虐待したり投獄したりすることを意に介さない。

 

13:13 お前は、自分の秘密を守り、よくよく用心せよ。極めて危ない橋を渡っているのだから。

 

13:14 これらのことを聞いたら、眠りから目を覚ませ。生涯、主を愛せよ。主に呼びかけて、救いを求めよ。

 

 

 

金持ちと貧しい人

 

13:15 生き物はすべて、その同類を愛し、/人間もすべて、自分に近い者を愛する。

 

13:16 すべての生物は類をもって群れ集まり、/人間も、自分に似た者と固く結び付く。

 

13:17 狼と小羊とがどうして共存できようか。罪人と信仰深い人もこれと同じである。

 

13:18 ハイエナと犬は、どうして仲良くできようか。金持ちと貧しい者が、どうして和を保ちえよう。

 

13:19 荒れ野のろばが、獅子の餌食となり、/貧乏な人は、金持ちに食い荒らされる牧草となる。

 

13:20 高慢な人にとって、謙遜が忌まわしいように、/金持ちにとって、貧乏な者は忌まわしい。

 

13:21 金持ちがよろめくと、友人が支えてくれる。身分の卑しい人が倒れると、/友人でさえ突き放す。

 

13:22 金持ちがしくじると、多くの人が助けてくれ、/言語道断なことを口にしても、かばってくれる。身分の卑しい者がしくじると、人々は非難し、/道理に合ったことを話しても、相手にしない。

 

13:23 金持ちが話すと、皆静かになり、/その話したことを雲の上まで持ち上げる。貧乏な人が話すと、「こいつは何者だ」と言い、/彼がつまずけば、これ幸いと引き倒す。

 

13:24 富は、罪に汚れていなければ、善である。貧乏が悪であるとは、/不信仰な人の言うことである。

 

 

 

人の顔つき

 

13:25 心の状態で、人の顔つきは変わる。うれしい顔にもなれば、悲しい顔にもなる。

 

13:26 晴れやかな顔は、良い心の表れである。それにしても、格言作りは、骨が折れる。

 14章

 

幸いな人

 

14:1 口を滑らすことのない人は幸いだ。罪を悔やむ思いに苦しめられることがない。

 

14:2 良心にやましいことのない人、/希望を失うことのない人は、幸いだ。

 

 

欲深い人間

 

14:3 金に細かすぎる人に、富はふさわしくない。物惜しみをする人に、金銭は何の役に立つのか。

 

14:4 生活を犠牲にしてまで蓄える人は、/他人のために蓄えるようなものだ。その蓄えで、ぜいたくをするのは他人なのだ。

 

14:5 自分を痛めつけて、/だれかに楽をさせようとでもいうのか。その人は決して自分の財産を楽しむことはない。

 

14:6 自分のことで物惜しみする人ほど/痛ましい者はない。それこそは、その人の悪の報いである。

 

14:7 欲深さを忘れて善を施しても、/結局は、その性根を暴露する。

 

14:8 欲深な目つきの人間は、蓄財に身を削り、/困っている人から顔を背け、見ぬ振りをする。

 

14:9 貪欲な目は、自分の持ち分に満足せず、/蓄財に身を削るという悪は、魂を干からびさせる。

 

14:10 蓄財に身を削る者の目は、パンを惜しみ、/その食卓は貧しいかぎりだ。

 

 

 

生きているうちに富を活用せよ

 

14:11 子よ、分に応じて、財産を自分のために使え。主に対しては、ふさわしい供え物を献げよ。

 

14:12 次のことを心に留めよ。死は必ずやって来る。しかし、陰府の定めはお前に示されていない。

 

14:13 生きている間、友人に親切を尽くしておけ。できるかぎり手を差し伸べて、援助せよ。

 

14:14 一日だけの幸せでもそれを逃すな。良い楽しみの機会を見過ごすな。

 

14:15 お前が苦労して得たものは、他人の手に渡り、/汗の結晶も、くじで分配されてしまうではないか。

 

14:16 与えよ、受けよ、心を楽しませよ。陰府で楽しみをどうして求めえようか。

 

14:17 生あるものはすべて、衣のように古びてしまう。「なんじ、死すべし。」これは昔からの定め。

 

14:18 枝先に揺れる葉も、/散ってはまた芽生え出る。血と肉である人間の世代も、/ひとつが終われば、他のものが生まれる。

 

14:19 すべての業は朽ち果てて、/人は、その業とともに消えて行く。

 

 

知恵を持つことの幸い

 

14:20 知恵に深く思いを寄せる人、/英知をもって理を究める人は、幸いだ。

 

14:21 心の中で知恵の道を思い巡らし、/知恵の秘密を深く考える人は、幸いだ。

 

14:22 狩人のように、知恵の後をつけ、/その通り道で待ち伏せよ。

 

14:23 窓越しに知恵をのぞき見る者は、/戸口でも耳をそばだてる。

 

14:24 知恵の住まいの近くに宿る者は、/知恵の家の壁に釘を打ち込み、

 

14:25 その傍らに天幕を張る。こうして彼は、良い家に住むことになる。

 

14:26 彼は、子供たちを知恵の保護の下に置き、/知恵の枝に守られて夜を過ごす。

 

14:27 彼は、知恵の陰に覆われて暑さを免れ、/知恵の輝きに包まれて、そこに宿る。

 15章

 

知恵の働き

 

15:1 主を畏れる人は、これを行う。律法に精通している者は、知恵を悟る。

 

15:2 知恵は、母のように彼を出迎え、/新妻のように彼を迎え入れる。

 

15:3 英知のパンを食べ物として彼に与え、/知恵の水を飲み物として、彼に与える。

 

15:4 彼は、知恵に支えられて揺らぐことなく、/知恵に身を任せて、恥をかくことはない。

 

15:5 知恵は、周りの者たちよりも彼を優れた者とし、/集会で語るとき、適切な言葉を与えてくれる。

 

15:6 彼は楽しみを味わい、喜びの冠を受け、/その名声はいつまでも続く。

 

15:7 愚かな者は、決して知恵を悟らず、/罪深い者は、知恵をかいま見ることすらない。

 

15:8 知恵は、高慢な者から離れており、/偽りを言う者の心には決して思い浮かばない。

 

15:9 賛美の歌は、罪人の口にそぐわない。主に促されて歌うのではないから。

 

15:10 賛美は知恵をもってささげられ、/主御自身がこれを正しく導かれる。

 

 

 

人間の意思

 

15:11 「わたしが罪を犯したのは主のせいだ」と言うな。主が、御自分の嫌うことをなさるはずがない。

 

15:12 「主がわたしを迷わせたのだ」と言うな。主は、罪人には用がないのだから。

 

15:13 主は、忌まわしいことをすべて憎まれる。それらは、主を畏れる人にも好ましくない。

 

15:14 主が初めに人間を造られたとき、/自分で判断する力をお与えになった。

 

15:15 その意志さえあれば、お前は掟を守り、/しかも快く忠実にそれを行うことができる。

 

15:16 主は、お前の前に火と水を置かれた。手を差し伸べて、欲しい方を取ればよい。

 

15:17 人間の前には、生と死が置かれている。望んで選んだ道が、彼に与えられる。

 

15:18 主の知恵は豊かであり、/主の力は強く、すべてを見通される。

 

15:19 主は、御自分を畏れる人たちに目を注がれる。人間の行いはすべて主に知られている。

 

15:20 主は、不信仰であれとは、/だれにも命じたことはなく、/罪を犯すことを、許されたこともなかった。

 16章

 

 

 

子供は多い方がよいとはかぎらない

 

16:1 役に立たないような子を、大勢欲しがるな。不信仰な息子たちを、喜ぶな。

 

16:2 いくら子宝に恵まれても、/彼らが主を畏れないなら、喜ぶな。

 

16:3 彼らが長生きするものと当てにするな。その数の多いことを頼みとするな。お前は、思いがけない悲しみに打ちひしがれる。彼らの最期を、突然、知ることになるからだ。/主を畏れる一人の子は、千人の子にまさり、/不信仰な子を持つよりは、/子を持たずに死ぬ方がましだ。

 

16:4 一人の聡明な人は、町を繁栄させ、/無法者の一味は、消えうせる。

 

 

 

罪人に対する神の怒り

 

16:5 わたしは、次に述べるようなことを、/数多くこの目で見、/それよりもひどいことを、この耳で聞いた。

 

16:6 罪人の集まる所に、焼き尽くす火が燃え上がり、/反逆の民の間に、神の怒りが燃え盛った。

 

16:7 主は、いにしえの巨人たちを容赦されなかった。彼らは、その力を誇って、反逆したからである。

 

16:8 主は、ロトが住む町を見逃されなかった。人々の高慢を忌み嫌われたからである。

 

16:9 主は、滅ぶべき民に、憐れみを示されず、/彼らは、その罪によって、滅びうせた。主は、これらすべてのことを、/心のかたくなな諸国民に対して行い、/多くの聖なる人たちの願いにも、/動かされることはなかった。

 

16:10 また、かたくなな心をもって集まった/六十万の兵士たちの場合も同じであった。主は、鞭打ったり、憐れんだり、/打ちたたいたり、いやしたりしながら、/慈しみと懲らしめをもって、彼らを守られた。

 

16:11 かたくなな者が、一人だけだとしても、/罰を受けずに済むならば、驚くべきことだ。憐れみと怒りは、ともに主のものであり、/贖う力、怒りを浴びせる力を/主は持っておられる。

 

16:12 その憐れみが深いように、とがめもまた厳しい。主は、人を、それぞれの業によって裁かれる。

 

16:13 罪人は、略奪した物を抱えて/逃げおおせることはできない。主は、信仰深い人にいつまでも忍耐を/強いることはなさらない。

 

16:14 施しをするための機会は、主によって用意され、/人はおのおのその業に応じて、報いを見いだす。

 

16:15 主は、ファラオの心をかたくなにして、/主御自身を知ることができないようにされた。それは、主の働きが/天下に知れ渡るようになるためであった。

 

16:16 主は、その憐れみをすべての被造物に示し、/御自分の光を闇とともに、/アダムに分け与えられた。

 

 

 

確かな主の働き

 

16:17 このように言ってはならない。「わたしは主から身を隠そう。いと高き所で、わたしのことを/心に留めるものがいるだろうか。大勢の群衆に紛れてしまえば、/わたしに気づくものはだれもいない。数えきれない被造物の中で、/わたしはいったい、何ものか。」

 

 

 

16:18 見よ、天と、天の上の天、/大地と地下の海でさえも、/主が訪れると、揺り動かされる。全世界は、主の御心によって生み出され、/また、その御心によって造り上げられていく。

 

16:19 山や、大地の基も、/主が見つめると、共に震えおののく。

 

16:20 人の心は、そのことを考えようともしない。主の道を思い巡らす者もいない。

 

16:21 目に見えないはやてのように、/主の業の多くは、隠されている。

 

16:22 だから、このように言ってはならない。「だれが主の正義の業を告げ知らせるだろうか。また、だれが、忍耐強くそれを待つだろうか。契約の実現は、はるかかなたにあり、/すべてのものの取り調べは、/最後に行われるのだから。

 

16:23 これは心の狭い者の考え、/分別がなく、惑わされている人間が、/このような愚かなことを考える。

 

 

 

創造の業

 

16:24 子よ、わたしに耳を傾け、知識を身につけよ。わたしの言葉を心に銘記せよ。

 

16:25 わたしは、教訓を正しく示し、/正確に知識を告げ知らせる。

 

16:26 主は、初めに創造の業をなされたとき、/被造物にそれぞれの領分を定められた。

 

16:27 主は、それらの活動に永遠の秩序を与え、/世々代々までも変わらぬ役割を授けられた。これらの被造物は、/飢えることも、疲れることもなく、/その働きを止めることはない。

 

16:28 おのおのは、互いに領域を侵すことはなく、/主の定めに背くことも、とこしえにない。

 

16:29 その後で、主は、地に目を注がれた。そして、良きもので地を満たされた。

 

16:30 主は、地の面をあらゆる命あるもので覆われた。しかしこれらは、死んで再び土に帰る。

17章

 

 

人間の創造と賜物の付与

 

17:1 主は、人間を土から造られ、/再び、土に帰される。

 

17:2 主は、彼らに一定の寿命を与え、/地上のものを治める権能を授けられた。

 

17:3 主は、御自分と同じような力を彼らに帯びさせ、/御自分に似せて彼らを造られた。

 

17:4 主は、すべての生き物に、/人間への恐れを植え付け、/こうして、人間に獣や鳥を支配させられた。

 

17:5 人間は、主の五つの能力を使うことを許された。主は、六番目として、彼らに知性を分け与え、/七番目として、それらの能力を解釈する理性を/授けられた。

 

17:6 主は、彼らに、判断力と舌と目を与え、/耳と、よく考えるための心とを授けられた。

 

17:7 主は、悟りをもたらす知識で彼らを満たし、/善と悪との区別を示された。

 

17:8 主は、彼らの心に、/御自分への畏れを植え付けられた。彼らに、御業の偉大さを示すためであった。そして、くすしき御業を代々誇ることを/人々に許された。

 

17:9 彼らは、御業の偉大さを宣べ伝え、

 

17:10 聖なる御名をほめたたえる。

 

17:11 主は、彼らに知識を授け、/命をもたらす律法を受け継がせられた。今のままでは、死すべき者であることを、/彼らが悟るために。

 

17:12 主は、彼らと永遠の契約を結び、/御自分の裁きを示された。

 

17:13 彼らの目は、主の大いなる栄光を見、/彼らの耳は、主の厳かな御声を聞いた。

 

17:14 主は言われた。「あらゆる不正を警戒せよ。」そして、隣人に対する掟を各自に授けられた。

 

 

 

神の裁き

 

17:15 人間の歩みは、常に、主の前にあらわであり、/主の目を逃れることはできない。

 

17:16 彼らの歩みは、若いときから悪に傾き、/石の心を変えて、/血の通う心にすることができなかった。

 

17:17 全地を国々に分割されたとき、/主は、それぞれの国に、為政者を置かれた。だが、イスラエルは御自身の割り当てとされた。

 

17:18 主は、イスラエルを長子として鍛え上げ、/愛の光を分かち与え、/見捨てることはなさらない。

 

17:19 人々の行いは、主の前に/太陽のようにあらわであり、/主の目は、絶えず彼らの歩みに注がれている。

 

17:20 彼らの不正は、主から隠されることなく、/そのすべての罪は、主の前にあらわである。

 

17:21 しかし、主は情け深く、/お造りになったすべてのものをみそなわし、/見捨てたり、見殺しにしたりはせず、/大切に慈しまれる。

 

17:22 人の行う施しは、/主にとって、印章のように貴重であり、/人の親切を、/主は、御自分の瞳のように大事にされる。主は、御自分の息子や娘たちに、/悔い改めの心を分かち与えられる。

 

17:23 最後に、主は、立ち上がって人々を裁き、/行いに応じた報いを彼らの頭上に下される。

 

17:24 悔い改める者には、立ち帰る道を開き、/耐える力を失った者を励まされる。

 

 

 

主に立ち返れ

 

17:25 主に立ち帰り、罪から離れよ。御前で祈り、罪を犯す機会を遠ざけよ。

 

17:26 いと高き方に立ち戻り、不正に背を向けよ。主御自身が、お前を闇から救いの光に/導いてくださるから。/忌まわしいものを憎みに憎め。

 

17:27 陰府で、だれがいと高き方を賛美するだろうか。生きている者と違って、/だれが感謝の言葉をささげるだろうか。

 

17:28 死んで、もはや存在しない人からは、/感謝の言葉も消えうせる。生きていて健やかなときにこそ、/人は主を賛美する。

 

17:29 なんと偉大なことか、主の憐れみと、/立ち帰る者への贖いとは。

 

17:30 人は、何でもできるわけではない。人の子は不死身ではないのだから。

 

17:31 太陽よりも光輝くものがあるだろうか。しかし、この太陽でさえ欠けるのだ。まして、血と肉である人間は、/悪しき思いを抱く。

 

17:32 主は、いと高き天の軍勢を観閲される。人間は皆、土くれと灰にすぎない。

 18章

 

 

神の偉大さと慈しみ

 

18:1 永遠に生きている方が、/万物をことごとく造られた。

 

18:2 ただ主おひとりが、正しい方である。主のほかに正しい者はだれ一人いない。

 

18:3 主は、その手のひらの中で世界を動かし、/すべてのものは、その御旨に従う。主こそ、力をもってすべてを治める王であり、/清いものと汚れたものを分けられる。

 

18:4 御自分の業を告げ知らせる力を、/主はだれにも与えられなかった。だれが、その大いなる業を究め尽くしえようか。

 

18:5 その偉大な力を、だれがはかりえようか。だれが、その慈しみを、語りえようか。

 

18:6 だれも、それらを減らしたり/増やしたりはできない。だれも、主の不思議な業を/究め尽くすことはできない。

 

18:7 人が究め尽くしたと思ったときは、/まだ始まったばかりであり、/途中でやめてしまうと、徒労に終わる。

 

18:8 人間とは何者か。その存在の意義は何か。その行う善、その行う悪とは何か。

 

18:9 人の寿命は、長くて百年。しかし、永遠の眠りは計り難いほど長い。

 

18:10 大海の中の一滴、砂の中の一粒のように、/永遠という時に比べれば、/この寿命はわずかなものにすぎない。

 

18:11 このゆえに、主は、人々に対して忍耐し、/憐れみを彼らに注がれる。

 

18:12 主は、人間の惨めな末路を見、知っておられる。それゆえ、豊かに贖いを与えてくださる。

 

18:13 人間の慈しみは、隣人にしか及ばないが、/主の慈しみは、すべての人に及ぶ。主は、彼らをいさめ、鍛え、教えて、/羊飼いのように、羊の群れを連れ戻される。

 

18:14 主は、教訓を受け入れる者に、/また、主の裁きを熱心に待ち望む者に、/慈しみを施される。

 

 

施しをするときは

 

18:15 子よ、援助をするときには、相手を傷つけるな。施すときにも、相手をおとしめる言葉を吐くな。

 

18:16 朝露は、熱風の季節に安らぎを与えてくれる。言葉の露は施しよりも、効き目がある。

 

18:17 親切な言葉は、高価な贈り物にまさるではないか。情け深い人は、両方とも備えている。

 

18:18 愚か者は、思いやりがなく、小言ばかり言う。また、恩着せがましい人間の施しには、/だれも目を輝かさない。

 

 

事前に準備せよ

 

18:19 口を開く前に、よく考えよ。病気になる前に、養生せよ。

 

18:20 裁きが来る前に、自らを省みよ。そうすれば、主が訪れる時、お前は贖いを得る。

 

18:21 病気になる前に、自らへりくだれ。罪を犯したときは、改心の態度を示せ。

 

18:22 誓願は、必ず、期限内に果たせ。それを果たすことを、死ぬときまで延ばすな。

 

18:23 誓願を立てる前に、よく準備せよ。主を試す者になってはいけない。

 

18:24 お前が死ぬ日に下る主の激しい怒りを思え。また報復のときを心に留めよ。そのとき主は御顔を背けられる。

 

18:25 豊かなときには、飢饉のときを思い、/富んでいるときには、貧乏なときを思え。

 

18:26 早朝から夕方へと、時は移り、/すべては、主の御前で、速やかに過ぎ去る。

 

18:27 知恵ある人は、すべてに用心深く、/罪がはびこっているときには、/過ちを犯さないよう気をつける。

 

18:28 聡明な人は皆、知恵を知っており、/知恵を見いだした人に敬意を払う。

 

18:29 言葉に巧みな人々もまた、知恵を示し、/的確な格言をあふれるように注ぎ出す。唯一の主に信頼することは、/死んだ心と死者に執着することにまさる。

 

 

自制せよ

 

18:30 欲望に引きずられるな。情欲を抑えよ。

 

18:31 欲望に身を任せて、好き勝手なことをすれば、/お前は、敵の物笑いの種になる。

 

18:32 享楽にふけるな。宴会の費用がかさんで、身を滅ぼしてしまう。

 

18:33 借金してまで宴会を開いて、無一文となるな、/お前の財布が空だというのに。お前は、自分で自分を罠に掛けるようなものだ。

 

19:1 酒におぼれる労働者は、金持ちにはならない。小さな事を軽んじる者は、次第に落ちぶれる。

 

19:2 酒と女は、聡明な人の思慮を奪い、/娼婦におぼれる者は、/ますます向こう見ずな人間となる。

 

19:3 腐敗と蛆虫こそ、彼が受け取る分け前、/歯止めのきかない心は、彼を破滅に導く。

19章

 

 

無駄口を利くな

 

19:4 すぐに人を信じる者は、心が浅はかであり、/罪を犯す者は、自分自身を損なう。

 

19:5 悪を楽しむ者は、罰を受け、/享楽に背を向ける人は、その人生を輝かしくする。

 

19:6 口を慎む人は、平穏に暮らす。/無駄口を嫌う人は、心の負担が軽くなる。

 

19:7 うわさ話は繰り返すな。お前が損をすることは決してない。

 

19:8 友人について、また敵について、何も語るな。罪とならないかぎり、人の秘密を明かすな。

 

19:9 さもないと、お前の話を聞いた人は、警戒し、/遅かれ早かれ、お前を憎むようになる。

 

19:10 うわさを聞いたら、腹の中に納めておけ。安心せよ、それがお前を引き裂くことはない。

 

19:11 愚か者は、秘密を抱えるとひどく苦しむ。子を産む女が苦しむように。

 

19:12 太腿の肉に突き刺さった矢のように、/うわさ話は愚か者の腹の中に食い込んでいく。

 

 

 

うわさは問いただせ

 

19:13 うわさの渦中の友人には、問いただせ。彼は何もしていなかったのかもしれない。何かしていても、二度とはしなくなるだろう。

 

19:14 うわさの渦中の隣人には、問いただせ。彼は何も言わなかったのかもしれない。何か言っていても、二度とは言わないだろう。

 

19:15 うわさの渦中の友人には、問いただせ。しばしば中傷にすぎないから。うわさは一切信じるな。

 

19:16 うっかり口を滑らすこともある。舌先で罪を犯さない者がいるだろうか。

 

19:17 うわさの渦中の隣人を脅さず、問いただせ。その後は、いと高き方の律法に任せよ。

 

19:18 主を畏れることは、/主に受け入れられることの初めであり、/人は、知恵によって主から愛を授かる。

 

19:19 主の掟を知ることは、命の教訓を得ること。主に喜ばれることを行う人は、/不死の木の実を楽しみ味わう。

 

 

 

知恵とずる賢さ

 

19:20 すべての知恵は、主を畏れることにある。すべての知恵には、律法の実践が伴い、/また、主の全能についての知識が伴う。

 

19:21 召し使いが主人に、/「いやです、その仕事はできません」と言い、/後でそれをやり遂げたとしても、/自分の雇い主を怒らすだけである。

 

19:22 悪にたけることは、知恵ではない。罪人の忠告に従うことは、賢明ではない。

 

19:23 ずる賢い嫌な者もいれば、/無知で分別のない者もいる。

 

19:24 理解する力では劣っていても、主を畏れる人は、/思慮に富んでいながら律法を犯す者にまさる。

 

19:25 巧妙なずる賢さ、これは不法行為である。自分の正当性を示すために、/あれこれこじつける者もいる。裁判で正義を打ち立てようとする知者もいる。

 

19:26 ならず者が黒の喪服を着て身をかがめても、/その心の中は、欺きに満ちている。

 

19:27 彼は顔をうつむけ、聞こえぬ振りをしているが、/だれも気づかなければ、お前を出し抜く。

 

19:28 今は、力がないので、罪を犯さずにいるが、/折あらば、悪事を働く。

 

19:29 人は、会ってみれば分かる。賢い人は、顔を合わせてみればすぐ分かる。

 

19:30 身なりや笑うときの口の開け方、/また、その歩きぶりは、その人の人柄を示す。

 20章

 

*語るにも黙るにも時をわきまえよ

 

20:1 とがめるのに適切でない時があり、 黙っている方が、分別を示すこともある。

 

20:2 心の中で憤るよりは、とがめる方がよい。

 

20:3 過ちを自ら認める人は、恥を免れる。

 

20:4 情欲にかられて おとめを犯そうとする宦官のように、 力ずくで正当性を主張しようとする者がいる。

 

20:5 黙っていて、知恵ある人と見られる者もあり、 しゃべりすぎて、憎まれる者もいる。

 

20:6 答えられないために、黙っている者もいれば、 時をわきまえて、黙っている人もいる。

 

20:7 知恵ある人は、時が来るまで口をつぐむ。 ほら吹きと無分別な者は、 時をかまわず、しゃべりまくる。

 

20:8 口数の多い者は、嫌われ、 他人の話を奪う者は、憎まれる。 〔とがめられて改めるのは、なんと立派なことか。 お前は故意に罪を犯さなくても済む。〕

 

 

*人生には予期せぬことがある

 

20:9 不幸な目に遭って、幸せを見つける人もいれば、 思わぬ幸運に巡り会って、損をする者もいる。

 

20:10 送り主に何の利益にもならない贈り物もあれば、 二倍になってお返しが来る贈り物もある。

 

20:11 名誉を求めて、恥を受けることもあれば、 身分の卑しい人が一躍頭角を現す例もある。

 

20:12 わずかな金で多くの物を買い、 後で、七倍も支払う者がいる。

 

20:13 知恵ある人は、言葉が少なくても慕われるが、 愚か者は無駄なお世辞を振りまく。

 

20:14 分別のない者からの贈り物は、 お前に何の利益ももたらさない。 〔けちな人間がしぶしぶする贈り物も同様である。〕 彼は、自分が贈った物より更に多くのものを 期待しているのだから。

 

20:15 彼は、わずかな物を贈って、多くの小言を言い、 町の触れ役のように、その口を開く。 彼は、今日貸し付けて、明日はその返却を迫る。 こういう者こそ、憎むべき人間だ。

 

20:16 愚か者は言う。「わたしには友がない。 親切にしたのに、何のお礼もしてくれない」と。 愚か者のパンを食べる者は、彼の悪口を言い、

 

20:17 なんと多くの人々が、 しばしば、彼をあざけり笑っていることか。 〔彼は自分の物を正しい心で扱わず、 他人の物も自分の物と区別しないのだから。〕

 

 

*時をわきまえぬ話

 

20:18 口を滑らすよりは、道で滑る方がましだ。 口を滑らして、悪人は速やかに没落する。
 

20:19 不作法な人間は、場違いの話のようなもの、 教養のない人間が、絶えずそれを口にする。

 

20:20 愚か者が語る格言は、何の反応も得られない。 彼は、時をわきまえずそれを口にするのだから。

 

 

 

*世間体

 

20:21 貧しさゆえに、罪を犯さないで済む人もいる。 仕事を終えて休むとき、 彼は良心に責められることは何もない。

 

20:22 世間体を気にして、身を滅ぼし、 無分別な者に気を遣って、身を滅ぼす者もいる。

 

20:23 恥をかきたくないために、無理な約束をし、 いたずらに友を敵に回す者もいる。

 

 

*うそ

 

20:24 うそは、人間にとって醜い汚点、 教養のない人間は、絶えずそれを口にする。

 

20:25 絶えずうそをつく者よりも、盗人の方がましだ。 だが、両者とも、最後には破滅に至る。

 

20:26 うそつきの性癖は、恥をもたらし、 その汚名は、いつまでも付きまとう。

 

 

   格言集

 

*知恵の適切な利用

 

20:27 知恵ある人は、小さなきっかけで出世する。 思慮深い人は、上に立つ人の好意を受ける。

 

20:28 土地を耕す者は、収穫物を積み上げ、 上に立つ人の好意を受ける者は、 その不正を償ってもらえる。

 

20:29 接待や贈り物は、知恵ある人の目をもくらまし、 口にはませた猿ぐつわのように、批判を封じる。

 

20:30 隠された知恵とうずもれた宝、 それが何の役に立つのか。

 

20:31 自分の知恵を隠す人よりは、 自分の愚かさを隠す人の方がましだ。

 

20:32 〔粘り強い忍耐をもって主を求める人は、 主人を持たず、自分で生活を律する人にまさる。〕

21章

 

*罪を避けよ

 

21:1 子よ、お前は罪を犯した。二度と繰り返すな。 過去の罪については、赦しをこいねがえ。

 

21:2 蛇を避けるように、罪を避けよ。 近寄れば、かみつかれてしまう。 その歯は、獅子の歯のようなもの、 人の命を奪い取る。

 

21:3 あらゆる不法は、両刃の剣のようなもの、 その傷は、いやすすべがない。

 

21:4 威嚇と横柄は、富を損ない 高慢な者の家は覆される。

 

21:5 貧しい人の口から出る願いは、主の耳に達し、 主の裁定は、速やかに下される。

 

21:6 訓戒を嫌う者は、罪人の道をたどる。 主を畏れる人は、心の底から、主に立ち帰る。

 

21:7 雄弁家の名声は、遠くまで知れ渡るが、 賢い人はその失言をすぐに見抜く。

 

21:8 借金して家を建てる者は、 石を集めて自分の墓を建てるようなものだ。

 

21:9 無法者の集まりは、麻屑の束。 彼らは、燃え盛る火となって絶え果てる。

 

21:10 罪人の歩む道は、平坦な石畳であるが、 その行き着く先は、陰府の淵である。

 

 

*知恵ある人と愚か者  

 

21:11 律法を守る人は、自分の思いに振り回されない。 主を畏れることは、知恵に至る。

 

21:12 賢さに欠ける者には、教育の施しようがない。 しかし、苦さを含む賢さもある。

 

21:13 知恵ある人の知識は、洪水のようにあふれ、 その勧告は、命の泉のようである。

 

21:14 愚か者の腹は、壊れた壺のようなもの、 どんな知識もこぼれ出てしまう。

 

21:15 身を持するに堅い人は、知恵ある言葉を聞くと、 これを称賛し、更に言葉を添える。 放蕩に身を持ち崩す者はこれを聞くと嫌になり、 背後に投げ捨てて顧みない。

 

21:16 愚か者の解説を聞くことは、 重い荷物を背負った旅のようなもの、 聡明な人の唇から出る言葉は、人の心を喜ばせる。

 

21:17 集会では、分別ある人の意見が求められ、 人々は、彼の言葉を心の中でかみしめる。

 

21:18 愚か者にとって、知恵は、 崩れた家のように役立たず、 聡明でない者の知識は、 筋道の通らない話のようにずさんである。

 

21:19 頭の鈍い者にとって、教訓は足枷、 右手にかけられた手錠のようなものである。

 

21:20 愚か者は、大声で笑い、 賢い人は、笑っても、もの静かにほほ笑む。

 

21:21 分別ある人にとって、教訓は金の飾り、 右腕にはめる腕輪のようなものである。

 

21:22 愚か者は、すぐに家の中に入り込むが、 経験に富む人は、門前で遠慮深くたたずむ。

 

21:23 分別のない者は、戸口から家の中をのぞき込むが、 教養ある人は、外で立って待つ。

 

21:24 戸口で聞き耳を立てるのは、 教養のない人間のすること、 分別ある人は、それを耐え難い恥と考える。

 

21:25 他人の唇は、これらのことを語る。 しかし、分別ある人は、言葉を吟味する。

 

21:26 愚か者の心は口にあり、 知恵ある人の口は心にある。

 

21:27 不信仰な者がサタンを呪うのは、 自分自身を呪っているのだ。

 

21:28 告げ口をする者は、自分自身を汚し、 近所の人たちから憎まれる。

22章

 

 

怠け者としつけの悪い子供

 

22:1 怠け者は、糞で汚れた石と同じで、 だれもが、その汚らわしさをなじる。

 

22:2 怠け者は、牛の糞と同じで、 つかんだ者は、だれもが手を振って払い落とす。 

 

22:3 しつけの悪い子を持つことは、父親の恥、 娘が生まれれば財産は減る。 

 

22:4 分別のある娘は、良い夫に恵まれ、 恥知らずの娘は、父親の悩みの種となる。 

 

22:5 厚かましい女は、父親と夫に恥をかかせ、 どちらからも軽蔑される。 

 

22:6 時をわきまえない小言は、葬式のときに、 にぎやかな音楽を流すようなもの、 だが、鞭によるしつけは、どんなときでも 知恵あるやり方。 

 

22:7 良い生活をして、食べ物に不自由しない子供は、 両親の家柄の卑しさを覆い隠す。

 

22:8 人々を侮り、不作法で、横柄な子供は、 自分の親戚たちの良い家柄をも汚してしまう。
 

 

 

 

*始末に負えぬ愚か者

 

 22:9 愚か者を教えるのは、 陶器の破片をつなぎ合わせるようなもの、 また、眠っている人を、 深い眠りから呼び起こすようなものである。

 

22:10 愚か者に説明するのは、 うたた寝をしている人に話すようなもの。 説明したのに「何のこと」と問う

 

22:11 死者のために泣け、光が消えたのだから。 愚か者のために泣け、知性が消えたのだから。 死者のためには気持よく泣け、 彼は安息についたのだから。 愚か者が生きているのは、死ぬよりも始末が悪い。

 

22:12 死者のための嘆きは、七日間続くが、 愚か者や不信仰な者のための嘆きは、 彼らが生きているかぎり続く。

 

22:13 分別のない者と長話をするな。 物分かりの悪い者を訪れるな。 彼はよく理解できずに、 お前のことをすべて軽くあしらう。 そういう者には気をつけろ。 さもないと、やっかいなことになる。 彼が身を震わすとき、 その汚れでよごされないようにせよ。 彼を避けよ。そうすれば、お前は安らぎを得、 彼の狂気に悩まされることはない。

 

22:14 鉛より重い重荷は何か。 その名は「愚か者」。ほかにはない。

 

22:15 砂や塩や鉄の塊の方が、 物分かりの悪い者よりも、担いやすい。

 

22:16 建物にしっかりと組み込まれたつなぎ梁は、 地震に遭っても、外れてしまうことはない。 同様に、思慮に富んだ揺るぎない心は、 どんな時にも、くじけない。

 

22:17 深い知性に支えられた心は、 滑らかな壁に彫り刻まれた飾り模様のようである。


22:18 高い石垣の上に置かれた小石は、 風が吹けば、ひとたまりもない。 同様に、愚か者の考えにおじける心は どんな恐怖にも、耐えられない。

 

 

*友情

 

22:19 目を突くと、涙が流れ、 心を突き刺すと、感情が表れる。

 

22:20 石を投げると、鳥は飛び去り、 友をののしると、友情は壊れる。 

 

22:21 友に向かって剣を抜いたとしても、 望みを捨てるな。まだ和解の道はある。 

 

22:22 友と口論をしたとしても、 心配するな。まだ仲直りの道はある。 だが、悪口、高慢、秘密の暴露、だまし討ち、 こういうことをすると、友人は皆逃げて行く。

 

22:23 隣人が貧しいときに、信頼を勝ち取っておけ。 彼が成功すれば、お前もその幸せにあずかれる。 逆境にあるときには、ずっとそばに居てやれ。 彼が遺産を継げば、その分け前にあずかれる。 人はどんなときにも、貧しい境遇を軽蔑したり、 知性に欠ける金持ちを、 称賛したりすべきではない。

 

22:24 かまどで火が燃える前に、湯気と煙が出る。 流血の前には、罵詈雑言が飛び出す。

 

22:25 わたしは、友をかばうことを恥とせず、 また、彼の前から身を隠すことは決してしない。

 

22:26 彼のせいで、災難がわたしにふりかかれば、 それを聞いた者は皆、彼を警戒するだろう。

23章

 

23:1 主よ、父よ、わが命の君よ、わたしを見放さず、 唇の思いどおりにさせないでください。 唇のために過ちに 陥らないようにしてください。

 

23:2 だれが、わたしの思いに鞭を当て、 わたしの心に知恵の訓練を施してくださるのか。 わたしの過失を容赦せず、 思いと心との罪を決して見逃さないために。

 

23:3 そうすれば、わたしの過失は増すことなく、 罪が増えることもありません。 また、わたしは敵対者の手に陥らず、 敵に笑われることもありません。 彼らにとって、あなたの憐れみを受ける望みは、 遠い先のこと。

 

23:4 主よ、父よ、わが命の神よ、 わたしにみだらな目を与えないでください。

 

23:5 わたしから情欲を遠ざけてください。

 

23:6 食欲や色欲のとりことせず、 恥知らずな欲情に引き渡さないでください。

 

 

口のきき方についての教訓

 

*誓い

 

23:7 子らよ、口の利き方についての教訓を聞け。 これを守る者は、決して災いに陥らない。

 

23:8 罪人は自分の唇で罠に陥り、 ののしる者や高慢な者は、唇によってつまずく。

 

23:9 むやみに誓いを口にするな。 みだりに聖なる方の御名を呼ぶな。

 

23:10 絶えず鞭で問いただされている召し使いには、 生傷が絶えないように、 むやみに誓いを立て、御名を呼ぶ者は、 決して、罪から清められることはない。

 

23:11 数多く誓う者は、不法に満ち、 鞭がその家からなくなることはない。 誓いに背けば、彼はその罪を負わねばならず、 誓いを無視すれば、二重の罪を犯すのだ。 偽りの誓いを立てるなら、その罪は赦されず、 その家は、苦悩で満たされる。

 

 

*みだらな話

 

23:12 死と肩を並べるほどの話し方がある。 それは、ヤコブの子孫の間にあってはならない。 主を信じる人は、そのような話し方を一切退け、 罪に巻き込まれることはない。

 

23:13 下品でみだらな話をする癖をつけるな。 そういう言葉を吐くこと自体が、罪なのだから。

 

23:14 お前が上に立つ人たちの席に連なるときには、 父と母とを思い出しなさい。 さもないと、彼らの前で我を忘れ、 いつもの癖が出て愚かなふるまいをしてしまう。 そして生まれない方がよかったのに、と思い、 お前は自分の生まれた日を呪うだろう。

 

23:15 下品な言葉遣いに慣れきっている者は、 生涯、その癖を直すことはできない。

 

 

*みだらな男

 

23:16 罪に罪を重ねる二種類の人があり、 第三の種類の人間は、神の怒りを招く。 燃え盛る火のような熱い情欲は、 燃え尽きるまで、決して消えない。 みだらな人間は、自分の体を肉欲に任せ、 火が彼を焼き尽くすまで、 とどまることを知らない。

 

23:17 女好きの人間には、 どんなパンでもおいしく、 死ぬまで、これに飽きることはない。

 

23:18 自分の寝床を抜け出す男は、 心の中で言う。「だれが見ているものか。 周りは暗闇だし、壁がわたしを隠している。 だれも見ていない。何を恐れる必要があろうか。 いと高き方は、わたしの罪など、 少しも気に留めはしない」と。

 

23:19 彼が恐れるのは、人の目だけである。 彼は知らないのだ。主の目は、 太陽より一万倍も明るく、 人間のすべての歩みを見極め、 隠れたところまでも、お見通しであることを。

 

23:20 万物は、創造される以前から主に知られ、 また、その完成の後も、同様である。

 

23:21 こういう男は、町の大通りで処罰され、 彼が思いもかけなかった所で、捕らえられる。

 

 

*みだらな女

 

23:22 夫を顧みず、よその男によって 世継ぎをもうける女も、同様である。

 

23:23 第一に、こういう女はいと高き方の律法に背き、 第二に、夫を裏切り、 第三に、みだらにも姦淫を行い、 よその男によって子をもうけたからである。

 

23:24 こういう女は、会衆の前に引き出され、 その子供たちにも、罰が及ぶ。

 

23:25 その子供たちは、根づくこともなく、 枝を張って実を結ぶこともない。

 

23:26 こういう女は呪われた者として人々に記憶され、 その汚名は消えることはない。

 

23:27 こうして、後に残った人々は悟るであろう。 主を畏れることは、すべてにまさり、 主の戒めに従うことは何よりも麗しいと。

 

23:28 神に従うことは、大いなる誉れ。 長寿は、お前が神に受け入れられた印である。

24章

*知恵の讃歌

 

24:1 知恵は自分自身をほめたたえ、 その民の中で誇らしげに歌う。

 

24:2 いと高き方の御前での集会で知恵は語り、 天の万軍を前に誇らかに歌う。

 

24:3 「わたしはいと高き方の口から出て、 霧のように大地を覆った。

 

24:4 わたしは高い天に住まいを定め、 わたしの座は雲の柱の中にあった。

 

24:5 ひとりでわたしは天空を巡り歩き、 地下の海の深みを歩き回った。

 

24:6 海の波とすべての地と、 民も諸国もすべて、わたしの支配下にあった。

 

24:7 それらすべての中に憩いの場所を探し求めた、 どこにわたしは住もうかと。 

 

24:8 そのとき万物の創造主はわたしに命じた。 わたしを造られた方は わたしが憩う幕屋を建てて、仰せになった。 『ヤコブの中に幕屋を置き、 お前はイスラエルで遺産を受けよ。』

 

24:9 この世が始まる前にわたしは造られた。 わたしは永遠に存続する。

 

24:10 聖なる幕屋の中でわたしは主に仕え、 こうしてわたしはシオンに住まいを定めた。

 

24:11 また、主はその愛する町にわたしを憩わせ、 わたしはエルサレムで威光を放つ。

 

24:12 わたしは栄光に輝く民の中に、 わたしのものとして主が選び分けた民の中に、 根を下ろした。

 

24:13 わたしはレバノンの杉のように、 ヘルモン山の糸杉のように大きく育った。 

 

24:14 エン・ゲディのしゅろのように、 エリコのばら、 野にある見事なオリーブの木、 すずかけの木のようにわたしは大きく育った。

 

24:15 肉桂やアスパラトの木のように、 最上の没薬のように、 わたしは良い香りを漂わせた。 ヘルベナ香、シェヘレト香、ナタフ香のように、 また、幕屋に立ちこめる乳香の香りのように。

 

24:16 わたしはテレビンの木のように枝を広げた、 壮大で優美な枝を。

 

24:17 わたしはぶどうの木のように美しく若枝を出し、 花は栄光と富の実を結ぶ。

 

24:18 わたしは美しい愛と畏れとの母、 また知識と清らかな希望の母であって、 神から召された者、すべてのわたしの子供たちに、 代々に自分自身を与え続ける。

 

24:19 わたしを慕う人たちよ。わたしのもとに来て、 わたしの実を心行くまで食べよ。

 

24:20 わたしを心に覚えること、それは蜜よりも甘く、 わたしを遺産として受け継ぐこと、 それは蜂の巣から滴る蜜よりも甘い。

 

24:21 わたしを食べる人は更に飢えを感じ、 わたしを飲む人は更に渇きを覚える。

 

24:22 わたしに従う者は辱めを受けず、 わたしの言うことを行う人は罪を犯さない。」

 

 

*知恵と律法

 

24:23 これらすべてはいと高き神の契約の書、 モーセが守るよう命じた律法であり、 ヤコブの諸会堂が受け継いだものである。

 

24:24 主に支えられて常に雄々しくあれ。 主に寄りすがって離れるな、 主は力を与えてくださる。 主は全能で唯一の神。 主のほかに救い主はない。

 

24:25 律法は、ピション川のように、 初物の季節のチグリス川のように、 知恵であふれている。

 

24:26 律法は、ユーフラテス川のように、 収穫の季節のヨルダン川のように、 理解力をあふれ出させる。

 

24:27 律法は、光のように、 ぶどうを収穫する季節のギホン川のように、 教訓を輝かせる。

 

24:28 人間は、最初の者も知恵を完全には知らず、 最後の者も知恵を突き止めることはできない。

 

24:29 知恵の思いは海よりも広く、 その計画は地下の海よりも深いから。

 

24:30 わたしは川から引かれた水路、 庭へ流れ込む小川のようであった。

 

24:31 わたしは言った。「庭に水を注ぎ、 花壇を潤そう。」 すると直ちに水路は川となり、 川は海に変わった。

 

24:32 また、わたしは教訓をあけぼののように輝かせ、 その光を遠くまで及ぼそう。

 

24:33 わたしは預言のように教えを注ぎ出し、 世々代々にこれを残し伝えよう。

 

24:34 わたしが苦労してこの仕事をしたのは、 自分のためだけではなく、 知恵を求めるすべての人のためでもあることを 理解してほしい。

25章

*称賛に値する人たち

 

25:1 わたしを大いに喜ばす三つのもの、/それは主にも人にも麗しい。仲よく暮らしている兄弟、/友情で結ばれた隣人、/仲むつまじい夫婦。

 

25:2 わたしの嫌いな三種類の人、/その生き方にはたまらなく嫌気がさす。横柄に物乞いをする者、/うそつきの金持ち、/分別を失った、みだらな老人。

 

25:3 若いとき知恵を身につけずに、/年老いてからどうやってそれを手に入れるのか。

 

25:4 健全な判断は年輪を重ねた者に、/確かな勧告は長老にふさわしい。

 

25:5 知恵は年を経た者たちに、/理解力と忠告は尊敬すべき年寄りにふさわしい。

 

25:6 豊富な経験こそ老人の冠であり、/主を畏れることこそ彼らの誇りである。

 

25:7 わたしが幸運だと思う九種類の人がいる。十番目の人がいないわけではないが。自分の子供を誇りに思える人。生き永らえて、敵の没落を見届けられる人。

 

25:8 思慮深い妻を持つ人、/口を滑らせて失敗することのない人、/自分より劣る者に仕えなくてもよい人、/こういう人々は幸いだ。

 

25:9 分別を身につけた人、/聴く耳を持つ者に語ることのできる人。こういう人々は幸いだ。

 

25:10 更に偉大なのは知恵を身につけた人。だが、主を畏れる人はもっと偉大だ。

 

25:11 主を畏れることはすべてにまさる。主を畏れて生きる人に比べられる者はいない。

 

25:12 主を畏れることは主を愛することの初め、/信仰は、主に依り頼むことの初めである。

 

 

*悪妻と良妻

 

25:13 あらゆる傷の中で、/心の傷ほどいやし難いものはない。あらゆる悪意の中で、/女の悪意ほど耐え難いものはない。

 

25:14 あらゆる災いの中で、/わたしを憎む者から受ける災いほど、/また、あらゆる復讐の中で、/敵から受ける復讐ほどひどいものはない。

 

25:15 蛇の頭よりも恐ろしい頭はない。女のかんしゃくほど始末に負えないものはない。

 

25:16 獅子や竜と住む方が、/悪妻と暮らすよりはましである。

 

25:17 悪意に満ちた女はその形相が変わり、/顔つきは熊のように不機嫌になる。

 

25:18 彼女の夫は近所の家に行って食事をし、/思わず知らず、つらそうなため息をつく。

 

25:19 たちの悪い妻ほど始末に負えないものはない。そういう女は、罪人の運命を、たどるがよい。

 

25:20 物静かな夫が口やかましい妻と暮らすのは、/まるで老人がその足で砂丘を登るようなものだ。

 

25:21 女の美貌に夢中になるな。女におぼれるな。

 

25:22 妻が夫を養おうとすれば、/夫は腹を立て、面目を失い、/大いに屈辱を覚える。

 

25:23 悪妻は、夫の気持を卑屈にし、/顔つきを憂うつにさせ、/心を傷つける。夫を不幸にする妻を持つと、/手は萎え、ひざが弱る。

 

25:24 女から罪は始まり、/女のせいで我々は皆死ぬことになった。

 

25:25 水槽の水漏れをほうっておくな。悪妻に言いたいほうだい言わせるな。

 

25:26 妻がお前の指図に従わないなら、/彼女と縁を切れ。 

 26章

 

*悪妻と良妻 (25章より続き)

 

26:1 良い妻を持った夫は幸福である。彼の寿命は二倍になるだろう。

 

26:2 しっかり者の妻は夫を喜ばせ、/彼は平穏無事に生涯を送る。

 

26:3 良い妻はすばらしい賜物。主を畏れ敬う者に与えられる賜物である。

 

26:4 その人は豊かなときも貧しいときも心楽しく、/顔つきはいつも晴れやかだ。

 

26:5 わたしの心は次の三つのものに悩まされるが、/四番目のものには顔を向けるのさえ恐ろしい。町の人たちからの中傷、烏合の衆の雑言、/誹謗、これらは死より忌まわしい。

 

26:6 心を痛ませる悩みの種は、/夫をめぐる女どうしの嫉妬。その舌のもたらす災いはすべての人に及ぶ。

 

26:7 悪妻は緩んだ牛の軛のようなもの。彼女を制することは、さそりをつかむようなもの。

 

26:8 大酒を飲む妻は夫の激しい怒りを招き、/その恥知らずな行為をさらけ出す。

 

26:9 身持ちの悪い女はみだらな目と、/流し目でそれと分かる。

 

26:10 わがままな娘は厳しく監視せよ。自由にさせると勝手にふるまうようになる。

 

26:11 その恥知らずな目つきには警戒せよ。彼女がお前を挑発しても驚くな。

 

26:12 のどの渇いた旅人が口を開けて、/どんな水でも手当たりしだいに飲むように、/男と見ればだれにでも身を任せ、/矢筒を開いて矢を入れる。

 

26:13 優しい妻は夫を喜ばせ、/彼女の賢さは夫を健やかにする。

 

26:14 物静かな妻は主からの賜物、/賢い妻は何ものにも比べられない。

 

26:15 しとやかな妻は優しさにあふれ、/彼女の慎みは計り知れないほど貴重なものだ。

 

26:16 主のおられるいと高き天に輝く太陽のように、/よく整えられた家にいる妻は美しい。

 

26:17 聖なる燭台から燃え上がる光明のように、/健康な体を備えた妻の顔は美しい。

 

26:18 銀の台座に据えられた黄金の柱のように、/強い足首を持つ均整の取れた脚は美しい。

 

26:19 子よ、若いときから健康に留意せよ。余計なことにお前の力を費やすな。

 

26:20 すべての平地を巡って、肥沃な土地を求めよ。家を誇りとし、お前の種を蒔きつけよ。

 

26:21 そうすれば、お前の子孫は、末永く続き、/立派な家柄を誇って大いに繁栄する。

 

26:22 売春婦は、唾をかけられて当然であり、/人妻との浮気は死への落とし穴である。

 

26:23 律法に背く者には、不信仰な妻が与えられ、/主を畏れ敬う者には、信仰深い妻が与えられる。

 

26:24 恥知らずな妻は、放縦な生活にうつつを抜かし、/慎み深い娘は、夫に対してもしとやかである。

 

26:25 身勝手な妻は、あたかも犬のようであり、/貞節な女は、主を畏れ敬う。

 

26:26 夫を尊敬する妻は、皆から賢い女と見られ、/夫を軽蔑する高慢な妻には、/不信仰な女だと醜聞が立つ。良い妻を持つ夫は幸福である。彼の寿命は二倍にもなるからである。

 

26:27 声高でおしゃべりな女は、/戦場で鳴り響く進軍ラッパのようであり、/このような女を妻にする男はだれでも、/戦争の混乱の中で生涯を送るようなものだ。

 

 

*不正

26:28 わたしは次の二種類の人々に心の痛みを覚えるが、/三番目の者には怒りを覚える。貧しさゆえ、物に事欠く兵士。思慮があるのに軽んじられる人たち。正しい行いを捨てて罪に向かう者。主はその者を死に至らせる。

 

26:29 商売人が不正を避けることは難しく、/店で商う者が罪を免れることは困難だ。

 27章

 

*不正 (26章より続き)

 

27:1 多くの者たちは、利益を求めて罪を犯し、/裕福になろうと躍起になっている者は、/悪いことにも目をつぶる。

 

27:2 石と石との間にくいが打ち込まれるように、/物の売り買いには、不正行為が入り込む。

 

27:3 心から主を畏れ敬わなければ、/その家は、驚くほど急速に落ちぶれていく。

 

 

*言葉と心の思い

 

27:4 ふるいを揺さぶると滓が残るように、/人間も話をすると欠点が現れてくるものだ。

 

27:5 陶工の器が、かまどの火で吟味されるように、/人間は論議によって試される。

 

27:6 樹木の手入れは、実を見れば明らかなように、/心の思いは話を聞けば分かる。

 

27:7 話を聞かないうちは、人を褒めてはいけない。言葉こそ人を判断する試金石であるからだ。

 

 

*真実

 

27:8 正しくあろうと努めるならお前はそうなれるし、/祭服のように足もとまで正しさを身にまとう。

 

27:9 鳥が類を求めて群れて休むように、/真実も、それを行う者たちの所へ戻って来る。

 

27:10 獅子が獲物を待ち伏せるように、/罪も、不正を志す者を待ち伏せる。

 

 

*愚か者の話

 

27:11 信仰深い人の話には、常に知恵がある。愚か者は、月の形のように変わる。

 

27:12 良識を欠く者たちとは時を過ごすな。思慮に富む人たちとは、長くいるようにせよ。

 

27:13 愚か者の無駄口は不快感を与え、/彼らは、罰当たりなことを笑い楽しむ。

 

27:14 みだりに呪う人の話には、身の毛がよだち、/彼らの言い争いには耳を覆いたくなる。

 

27:15 高慢な者たちの争いは流血ざたとなり、/彼らのののしり合いは耳に不快だ。

 

 

*秘密を漏らすこと

 

27:16 秘密を漏らす者は信頼されなくなり、/心を寄せてくれる友人を持つことはできない。

 

27:17 友人を愛し、彼を信じて近づけ。しかし、彼の秘密を漏らしたならば、/彼の後を追い回すな。

 

27:18 人が知人を死によって失うように、/お前は隣人の友情を失ったからだ。

 

27:19 お前は手から小鳥を逃がすように、/隣人を去らせたのであり、もはや元には戻せない。

 

27:20 彼の後を追い回すな。彼ははるか遠くに去り、/罠を逃れたかもしかのように逃げてしまった。

 

27:21 傷は包帯で手当てでき、/侮辱には仲直りの道がある。しかし、秘密を漏らせばもう望みはない。

 

 

*偽善的行為

 

27:22 目をそらす者は、悪事をたくらんでいる。それを見た者は彼を敬遠する。

 

27:23 彼はお前の目の前でうまいことを言い、/お前の語る言葉に大げさに感嘆してみせる。しかし、陰では別なことを言い、/お前の話を種にしてお前を陥れるのだ。

 

27:24 わたしには嫌いなものが数多くあるが、/そのようなやからほど嫌なものはない。主もまた、彼を嫌われるであろう。

 

27:25 上に向かって石を投げれば頭の上に落ちてくる。だまし討ちをすれば自分も傷つく。

 

27:26 落とし穴を掘る者は自分がそこに落ち込み、/罠を仕掛ける者は自らそれにはまり込む。

 

27:27 悪事を働けばその報いがわが身に返って来る。だが、それがどこから来たか彼には分からない。

 

27:28 傲慢な者は他人を軽蔑し非難するが、/復讐が獅子のように待ち伏せる。

 

27:29 信仰深い人の苦境を喜ぶ者は罠にかかり、/死ぬ前に苦悩にさいなまれるであろう。

 

 

*憤り

 

27:30 憤りと怒り、これはひどく忌まわしい。罪人にはこの両方が付きまとう。

 28章

*憤り(27章より続き)

 

28:1 復讐する者は、主から復讐を受ける。主はその罪を決して忘れることはない。

 

28:2 隣人から受けた不正を赦せ。そうすれば、/願い求めるとき、お前の罪は赦される。

 

28:3 人が互いに怒りを抱き合っていながら、/どうして主からいやしを期待できようか。

 

28:4 自分と同じ人間に憐れみをかけずにいて、/どうして自分の罪の赦しを願いえようか。

 

28:5 弱い人間にすぎない者が、/憤りを抱き続けるならば、/いったいだれが彼の罪を赦すことができようか。

 

28:6 自分の最期に心を致し、敵意を捨てよ。滅びゆく定めと死とを思い、掟を守れ。

 

28:7 掟を忘れず、隣人に対して怒りを抱くな。いと高き方の契約を忘れず、/他人のおちどには寛容であれ。

 

 

*口論

 

28:8 口論に加わるな。そうすれば、/お前は罪を犯す機会が少なくなる。怒りっぽい人は口論をあおり立てるからだ。

 

28:9 罪深い者は、友情にひびを入れ、/和やかに暮らしている人たちに不和をもたらす。

 

28:10 火は薪をくべればそれだけ燃え上がり、/口論は頑固さが加わると、激しさを増す。激怒は、力たけき者ほどすさまじく、/怒りは、富に頼る者ほど激しくなる。

 

28:11 軽率な争いは、火をあおることになり、/軽はずみな口論は、流血の惨事につながる。

 

28:12 火種に息を吹きかければ真っ赤に燃え上がり、/唾を吐きかけると消える。どちらもお前の口のなせる業。

 

 

 

*舌禍

 

28:13 うわさして回る者や二枚舌の者は、呪われよ。平穏に暮らしている多くの人々を破滅させたから。

 

28:14 陰口は多くの人の心を乱し、/国から国へと人々を追い立て、/堅固な町々を破壊し、/権力者たちの家を破滅させた。

 

28:15 陰口は貞節な妻さえ離婚に追い込み、/彼女らが労苦して得たものを奪い取った。

 

28:16 陰口を気にすると、心穏やかではなくなり、/平穏に暮らすことはできなくなる。

 

28:17 鞭で打つと皮膚が裂け、/舌で打つと、骨さえ砕ける。

 

28:18 多くの人が剣のやいばに倒れたが、/その数は、舌のやいばに倒れた人には及ばない。

 

28:19 舌の攻撃を避けることのできた人、/荒れ狂う舌の被害を受けなかった人、/その軛につながれず、/その鎖に縛られなかった人、/このような人は幸いである。

 

28:20 舌の軛は鉄の軛、/その鎖は銅の鎖。

 

28:21 舌のもたらす死は残酷だ。陰府の方がそれよりもましである。

 

28:22 舌は信仰深い人には力を振るえず、/その炎も彼らを焼くことがない。

 

28:23 主を捨てる者は舌によってひどい目に遭う。舌は彼らの内で燃え、決して消えることなく、/獅子のように襲いかかり、/豹のように彼らを引き裂く。

 

28:24 さあ、お前の畑には茨で囲いを巡らせ。

 

28:25 お前の口には戸を立てて、かんぬきを掛けよ。

 

28:24 お前の金銀はしまって錠を下ろせ。

 

28:25 お前の言葉は秤にかけて、慎重に用いよ。

 

28:26 口を滑らせないように注意せよ。待ち構えている者の餌食になるな。

29章

*貸し付けと返済

 

29:1 奇特な人は隣人に金を貸す。援助の手を差し伸べる人は掟を守っている。

 

29:2 隣人が困っているときは貸してやれ。隣人から借りた場合は、期限内に返せ。

 

29:3 約束は固く守り、相手に対して誠実であれ。そうすれば、お前の必要はいつでも満たされる。

 

29:4 多くの人は、借りた金をもうけ物と見なし、/援助してくれた人たちに迷惑をかける。

 

29:5 金を借りるまでは相手の手に接吻し、/その財産について声音を変えて世辞を言う。返済の時が来ると期限を延ばし、/返事をあいまいにして、/都合がつかないと言って弁解する。

 

29:6 貸し主は、返してもらえたとしても、/せいぜい半分しか取り戻せない。だが、それだけでももうけ物と考えよ。もしも、そのように考えでもしなければ、/貸し主は財産をだまし取られたことになり、/つまらぬことで敵をつくることになる。借り手は呪いと悪口を返し、/感謝どころか、無礼な態度を返してくる。

 

29:7 多くの人が、貸すことを断るのは、悪意ではない。むざむざ奪い取られることが分かっているからだ。

 

 

*施し

 

29:8 けれども、貧しい人には寛容であれ。施しを延ばして相手を待たせてはならない。

 

29:9 主の掟に従って貧しい人を助けよ。その人が困っているとき、空手で帰すな。

 

29:10 兄弟や友人のために金を使え。金を石の下に隠してさび付かせ無駄にするな。

 

29:11 いと高き方の掟に従って、富を積め。それは黄金よりもはるかにお前のためになる。

 

29:13 頑丈な盾や丈夫な槍以上に、/施しはお前が敵と戦うときの武器となる。

 

 

*保証

 

29:14 善意の人は隣人のために保証人となるが、/恥知らずな者は彼を見捨ててしまう。

 

29:15 保証してくれた人の恩を忘れてはならない。彼はお前のために己をかけたのだから。

 

29:16 罪深き者は保証人の財産を食い尽くす。

 

29:17 恩を知らぬ者は、助けてくれた人を見捨てる。

 

29:18 万事うまくいっていた多くの人が、/保証人になったため没落し、/海の波にもてあそばれるようにほんろうされた。勢力ある人たちも家を失い、/見知らぬ国々をさまよい歩かねばならなかった。

 

29:19 罪深い者が保証人を引き受ければ、/利益を得ようとして裁判ざたに巻き込まれる。

 

29:20 お前は力に応じて隣人を援助し、/危ない目に遭わぬように注意せよ。

 

 

*貧しさと自尊心

 

29:21 生活に欠かせないものは、水と食物と衣類、/それに、私生活を守る家である。

 

29:22 貧しくとも、梁がむき出しのわが家で暮らすのは、/他人の家で豪華な食事をするよりましである。

 

29:23 持ち物が多くても少なくても、それで満足し、/居候の汚名は着るな。

 

29:24 家から家へと渡り歩く生活は何とも惨めで、/居候の身では、言いたいことも言えない。

 

29:25 給仕をし、酒をついでも感謝されず、/かえって、嫌みを言われることになる。

 

29:26 「居候、ここへ来て食卓の準備をしろ。何かあるなら持って来い。」

 

29:27 「出て行け、この居候。大事な客が来たのだ。おれの兄弟が泊まりに来て客間が必要だ。」

 

29:28 分別のある人にとって耐え難いことは、/家主の小言と金を借りた相手からの侮辱である。

 30章

*子供の養育

 

30:1 わが子を愛する者は、しばしば鞭で懲らしめる。そうすれば晩年、子供は彼の喜びとなる。

 

30:2 子をしつける親は、/その子のお陰で楽ができ、/知人の間で自慢ができる。

 

30:3 わが子を教育する者は、敵にはねたまれても、/友人たちにはその子を誇りとすることができる。

 

30:4 父親がこの世を去っても、/消えてしまったわけではない。父親そっくりの子が、後に残っているからだ。

 

30:5 父親は生きている間、わが子を見て喜び、/この世を去るときにも、悲しむことがない。

 

30:6 敵に報復してくれる者を彼は後に残し、/友人に恩返ししてくれる者を後に残すのだ。

 

30:7 子を甘やかす者は、傷の手当てに明け暮れ、/子がわめき叫ぶのを聞く度に、心を煩わす

 

30:8 馬は馴らさなければ手に負えなくなり、/子はしつけなければ、わがままになる。

 

30:9 子供は、放任すればお前を驚きあわてさせ、/溺愛すれば、お前を嘆かせることになる。

 

30:10 子供と一緒になって笑い興じるな。さもないと、共に悲嘆に暮れることになり、/最後には、歯ぎしりをして後悔することになる。

 

30:11 若いときには気ままなことをさせるな。また、過ちを大目に見るな。

 

30:12 若いときには、腰を低くさせよ。/子供のうちに体罰を与えよ。さもないと強情になり、言うことを聞かなくなる。また、彼はお前の心痛のもととなる。

 

30:13 お前の子供をしつけ、子供のために苦労せよ。さもないとその子は非行に走り、お前を困らせる。

 

 

*健康

 

30:14 貧しくても健康で体力のある方が、/裕福で病気に苦しんでいるよりはよい。

 

30:15 健康で丈夫な体は、あらゆる黄金にまさり、/強じんな精神は、莫大な財産にまさる。

 

 

*食べ物について

 

30:16 体の健康にまさる富はなく、/心の喜びにまさる楽しみもない。

 

30:17 つらい生活を送るよりは、死んだ方がよく、/長く患うよりは、永遠の安息の方がよい。

 

30:18 食欲を失った者の前に、並べられたごちそうは、/墓に供えられた食べ物と同じである。

 

30:19 偶像に供え物をしても無駄ではないか。食べることもかぐこともできないのだから。主に懲らしめられている者も、これと同じである。

 

30:20 ごちそうを見ても、ため息をつくだけである。若い娘を抱いて、ため息をつく宦官と同じだ。強引に裁きを行う者もこれと同じである。

 

 

*晴れやかな心

 

30:21 悲しみに負けて気力を失うな。あれこれ思い悩むことはない。

 

30:22 朗らかな心は、人を生気にあふれさせ、/喜びは長寿をもたらす。

 

30:23 気分を変えて心を奮い立たせ、/悲しみを遠くへ追い払え。悲しみは多くの人を滅ぼした。それは何の益にもならない。

 

30:24 ねたみや、怒りは寿命を縮め、/思い煩いは人を老けさせる。

 

30:25 快活な心は食欲を旺盛にし、/食べ物をおいしく味わわせる。

  

31章

 

富について

  

31:1 夜も寝ないで富を蓄えれば体はやせ衰え、 その富が心配で眠れなくなる。

 

 31:2 夜通し続く心配で、うたた寝さえもできない。 重病が眠りを妨げるのと同じである。

  

31:3 金持ちは労苦して財産を蓄え、 仕事を休んでぜいたくな生活を楽しむ。

 

31:4 貧しい者は労苦しても、生きるのが精一杯で、 手を休めるとたちまち生活に困る。

  

31:5 黄金を愛する者は正しい者にはなれず、 金銭を追い求める者は金銭で道を踏み外す。

  

31:6 黄金がもとで多くの者が身を滅ぼした。 彼らは滅亡と顔を突き合わせていたのだ。

 

31:7 黄金は、それに夢中になる者には罠となり、 愚か者は皆、そこにはまり込んでしまう。

 

31:8 清廉潔白な金持ちは幸いである。 黄金を追いかけなかったから。

 

31:9 そういう人がいたら彼に祝意を表そう。 民の間で、驚嘆すべきことを行ったのだから。

 

31:10 黄金の誘惑に打ち勝ち、 申し分のない生き方をした者はだれか。 彼こそは大いに誇ってよい。 法を犯しえたのに犯さず、 悪事を行いえたのに、行わなかった人はだれか。

 

31:11 その人の財産は揺るぎないものとなり、 会衆は彼の施しを数え上げ、たたえるであろう。

 

 

 

宴会の席での心得

  

31:12 豪華な食卓に着くような場合には、 舌なめずりしたり、 「すごいごちそうだ」などと言ったりするな。

 

31:13 意地汚い目つきは下品であるとわきまえよ。 造られた物の中で、 目ほどさもしさを表すものはない。 だから、人はごちそう一つ一つに目を潤ませる。

 

31:14 目に留まるものすべてに手を伸ばすな。 人を押しのけてまで、皿の中のものを取るな。

  

31:15 同席の人を自分のことのように思いやり、 すべてのことに気を配れ。

  

31:16 出されたものは人間らしく食べよ。 人に嫌われないように、音を立てて食べるな。

  

31:17 行儀をわきまえ、人より先に食べ終えよ。 食い意地を張って、不快な感じを与えるな。

  

31:18 大勢の人と食卓を共にするときは、 他の者より先に手を出すな。

  

31:19 しつけを受けた者はわずかな量で満足し、 床に就いてからも、息苦しくなることはない。

  

31:20 程よく食べれば、安眠が得られ、 朝も早く起きられて、気分はさわやかである。 食い意地の張った者は、不眠に悩まされ、 吐き気と腹痛に苦しむ。

  

31:21 無理やり食べさせられたときは、 席を外して吐きに行け。そうすれば楽になる。

  

31:22 子よ、わたしを侮らず、言うことを聞け。 後になれば、わたしの言葉を悟るようになる。 何をするにも節度を守れ。 そうすればどのような病気にもかからない。

 

31:23 豪華な食事を振る舞う者を、人々は褒めそやす、 彼は本当に気前が良いと。

  

31:24 ごちそうを出し渋る者を、町中の人はなじる、 彼は全くけちなやつだと。

 

31:25 酒を飲んで男っぷりを見せようとするな。 酒で身を滅ぼした者は多い。

  

31:26 かまどの火が鉄の質をあらわにするように、 酒も、飲んで争えば、高慢な者の本性を暴き出す。

  

31:27 酒は適度に飲めば、 人に生気を与える。 酒なき人生とは何であろうか。 そもそも酒は、楽しみのために造られているのだ。

  

31:28 時をわきまえ、適度に飲む酒は、 心を浮き立たせ、人を陽気にさせる。

  

31:29 過度の飲酒は気分を損ない、 いらだちや、間違いのもととなる。

  

31:30 深酒は愚か者の気を高ぶらせて足をふらつかせ、 力を弱めて、傷を負わせる。

  

31:31 酒の席で、隣にいる客をなじったりするな。 愉快に過ごしている彼に、侮辱を加えるな。 とがめるような言葉を吐いたり、 借金の返済を迫って困らせたりしてはならない。

 

32章

  

 32:1 宴会の世話役に選ばれたなら、有頂天になるな。 客の一人として、皆と同じようにふるまえ。 彼らに心を配り、席に着け。

 

32:2 自分の任務をことごとく果たした後に着席せよ。 そうすれば、みんなの楽しみがお前の喜びとなり、 事の運びが見事だというので誉れの冠を受ける。

 

32:3 年長者よ、語れ、それは当然のことだから。 だが、要点を外さずに話し、音楽の邪魔をするな。

  

 32:4 余興の最中には、あれこれとしゃべるな。 時をわきまえずに、学識を見せびらかすな。

 

32:5 金の細工にはめ込まれたルビーの印章のように、 音楽の演奏は酒の席を引き立たせる。

 

32:6 金の台に飾られたエメラルドの印章のように、 歌の調べはぶどう酒の味をいや増す。

  

32:7 若者よ、必要なときだけ話せ。 語るとしても二度、それも求められた場合のみ。

  

32:8 簡潔に話せ。わずかな言葉で多くを語れ。 博識ではあっても寡黙であれ。

 

32:9 偉い人たちの間では、出過ぎたまねをするな。 年輪を重ねた人たちのいるところでは、 やたらと無駄話をするな。

  

32:10 雷鳴がとどろく前に稲妻が走り渡るごとく、 慎み深い人にその人望は先立つ。

  

32:11 潮時と見たら、席を立ち、ぐずぐずするな。 まっすぐ家へと急ぎ、道草を食ってはならない。

  

32:12 家では楽しく過ごせ。したいことは何でもせよ。 しかし、高慢な言葉を吐いて罪を犯すな。

 

32:13 これらすべてのことに加えて、 お前を造られた方、 その賜物によって歓喜に酔わせる方を賛美せよ。

 

 

 

 

 主を畏れる人

  

 32:14 主を畏れる人は、教訓を受け入れ、 朝早く起き主を求める人たちは、 主から称賛される。

  

32:15 律法を究めようとする人は、これに習熟し、 偽善者は、これにつまずく。

  

32:16 主を畏れる人は、何が正しいかを見いだし、 その正しい行いは、光のように輝く。

 

32:17 罪深い者は、批判されることを嫌い、 独りよがりな見解を持つものだ。

  

32:18 分別のある人は、決して思慮に欠けることなく、 高慢な異邦人は、畏れなどみじんも持たない。

  

32:19 よく考えずに何事をも行うな。 そうすれば、何をしても後で悔やむことがない。

 

32:20 危ない道を歩むな。 そうすれば、石だらけの道でころぶことはない。

  

32:21 なだらかな道だからといって気を許すな。

  

32:22 お前の子供たちからも目を離すな。

  

32:23 何事をするにも自信を持て。 これも掟を守ることなのである。

 

32:24 律法を頼みとする人は、掟に注意を払い、 主を信頼する人は、生活に困ることがない。

 

33章

 

 33:1 主を畏れる人に、災難はふりかからない。 試練に遭っても、その度に救い出される。

 

33:2 知恵ある人は律法を嫌わない。 律法に誠実でない者は、嵐の中の小舟のようだ。

 

33:3 聡明な人は御言葉を信頼し、 律法は、彼にとって神託同様、頼りになるものだ。

 

33:4 話は前もって準備せよ。 そうすれば聞いてもらえる。 習得したことを整理してから答えよ。

 

33:5 愚か者の心は、馬車の車輪のようなもの、 その考えは、心棒のようにぐるぐる回る。

 

33:6 口やかましい友は、あたかも種馬のようなもの、 だれが乗ってもいななくのだ。

  

 

主の裁断

  

33:7 どうして、ある日はほかの日よりも重要なのか。 一年のどの日にも、同じ太陽の光が注ぐのに。

 

33:8 これは主の裁断によって区別されたもの。 主は季節と祝祭日を定められた。

 

33:9 ある日を高めて聖なる日とし、 他の日を平日と定められた。

 

33:10 人間は皆、大地からのもの、 アダムは土から造られた。

 

33:11 主は、あふれるばかりの知識によって、 人々に違いをつくり、 それぞれに、異なった道を歩ませられた。

  

33:12 ある者を祝福して高め、 ある者を聖別して、みもとに近づかせられた。 しかし、他の者を呪って、卑しめ、 彼らをその地位から退けられた。

 

33:13 陶器職人がその手にある粘土を、 思うままに形づくるように、 造り主は御手の内にある人間を、 思うままに裁かれる。

 

33:14 善が悪と相対し、 命が死と相対しているように、 罪人は信仰深い人と相対している。

 

33:15 いと高き方が造られたすべてのものに目を注げ。 二つずつどれもがそれぞれ対になっている。

 

33:16 わたしは目を覚ましている最後の者だった、 摘み取る者が残したぶどうを集める者のように。

 

33:17 わたしは、主の祝福を受けて早くそこへ着き、 摘み取る者と同じように、 搾り桶をいっぱいにした。

 

33:18 知ってほしい。わたしが労苦したのは、 自分のためだけではなく、 教訓を求めるすべての人のためであったことを。

 

 33:19 わたしの言葉を聞け。民の上に立つ者たちよ。 会衆の指導者たちよ、わたしに耳を傾けよ。

  

 

財産

  

33:20 息子や、妻、兄弟や友人であっても、 お前が生きているかぎり、 お前の上に権力を振るわせるな。 また、他人に財産を与えるな。 さもないと、後悔して取り戻したくなる。

 

33:21 お前の内に命があり、息があるかぎり、 だれに対しても、自分の生き方を変えるな。

 

33:22 息子たちにねだられている方が、 彼らの助けを当てにして暮らすよりましだ。

 

33:23 事を行うにあたってはすべてに秀で、 お前の名誉に泥を塗るな。

 

33:24 お前の寿命が尽きる日、 息を引き取る時に、財産を譲り渡せ。

  

 

召し使い

  

33:25 ろばには、まぐさと鞭と重い荷物を、 召し使いには、パンとしつけと仕事を与えよ。

 

33:26 召し使いは厳しくしつけて働かせよ。 そうすればお前はくつろげる。 彼の手を休めさせると、自由を要求してくる。

 

33:27 軛と手綱は、家畜を抑えておとなしくさせ、 責め道具と拷問は、悪い召し使いに効果がある。

 

33:28 彼が怠けないように、熱心に仕事をさせよ。

 

33:29 怠惰は多くの悪行を教える。

 

33:30 彼にふさわしい仕事を受け持たせよ。 命じたとおりにしないなら、足枷を重くせよ。 しかし、だれに対しても厳しすぎてはならない。 不当な仕打ちは決してするな。

 

33:31 お前に召し使いがいるなら、お前と同等に扱え。 血をもって彼を買い取ったのだから。 お前に召し使いがいるなら、兄弟として扱え。 自分自身と同じように、 お前は彼が必要なのだから。

 

33:32 もし、虐待して逃げ去りでもしたら、

 

33:33 どこへ行って彼を捜し出すつもりなのか。

 34章

*夢みることのむなしさ

 

34:1 良識のない者はむなしく根拠のない望みを抱く。夢は愚かな者たちを空想へと駆り立てる。

 

34:2 夢を得ようとする者は、/影を捕まえようとしたり、/風を追いかける者と同じだ

 

34:3 夢の中で見るものは映像にすぎず、/鏡に映った自分の顔のようなもの。

 

34:4 汚れたものからどうして清いものが、/偽りからどうして真実が、取り出せようか。

 

34:5 占い、前兆、夢のたぐいは、無意味なもの。陣痛の中で思い描く、女の妄想のようなもの。

 

34:6 いと高き方が配慮して送ったのでないかぎり、/これらのことに、心を奪われるな。

 

34:7 多くの人々は夢に惑わされ、/これに望みをかけては身を滅ぼした。

 

34:8 律法は、そのような偽りによっては全うされず、/知恵も誠実な人の口から出てこそ全うされる。

 

 

*旅

 

34:9 旅をした人は、多くのことを知っており、/経験豊かな人は、洞察に富んだ事柄を語る。

 

34:10 経験の乏しい者は、わずかなことしか知らない。

 

34:11 しかし、旅をした人は、広い知識を身につける。

 

34:12 わたしは旅をして、多くのことを見た。わたしが悟った事は、語り尽くせない。

 

34:13 わたしは死ぬほどの危険に何度も出会った。しかし、これまでの経験のお陰で助かった。

 

 

*主を畏れる人の幸い 

 

34:14 主を畏れる人の霊は生き永らえる。

 

34:15 自分を救ってくださる方に、信頼しているから。

 

34:16 主を畏れる人は何事にもおびえることがなく、/決して臆病風を吹かさない。主にこそ彼は信頼しているから。

 

34:17 主を畏れる人の魂は幸いである。

 

34:18 彼は、だれを頼みとし、だれを支えとするのか。

 

34:19 主の目は、主を愛する者の上に注がれている。主は、力強い盾、堅固な支え、/熱風から守る避難所、真昼の日ざしを防ぐ陰、/転ばないように防ぎ、倒れないように助ける者。

 

34:20 主は彼らの魂を昂揚させ、目に輝きを与え、/健やかな命と祝福を授けられる。

 

 

*受け入れられないいけにえ

 

34;21 不正に得たものを、いけにえとして/献げるなら、その献げ物は汚れた物である。

 

34:22 不法を行う者の献げ物は、主に喜ばれない。

 

34:23 いと高き方は、不信仰な者の供え物を喜ばれず、/どれほどいけにえを献げても、罪は贖われない。

 

34:24 貧しい人の持ち物を盗んで、/供え物として献げるのは、/父親の目の前でその子を殺して、/いけにえとするようなものだ。

 

34:25 貧しい人々にとって、パンは命そのもの。これを奪い取るやからは、冷血漢だ。

 

34:26 隣人の生活の道を奪う者は彼を殺すようなもの。

 

34:27 日雇い人の賃金を巻き上げる者は、人殺しだ。 

 

34:28 一人が建て、もう一人がそれを壊すなら、/無駄骨を折るのみで、何の益があろうか。

 

34:29 一人が祈り、もう一人が呪うなら、/主は、どちらの声に耳を傾けられるであろうか。

 

34:30 しかばねに触れた後、身を清めておきながら、/また、これに触れるとしたら、/洗い清めることに何の意味があろうか。

 

34:31 このように、罪を悔いて断食をしておきながら、/また、出て行って同じことをしでかすなら、/彼の祈りに、だれが耳を傾けるであろうか。己を卑しめることに何の意味があろうか。

 

 35章

*受け入れられるいけにえ

 

35:1 律法を守ることは、多くの供え物に匹敵し、

 

35:2 掟に心を留めることは、和解の献げ物に、

 

35:3 他人の親切に報いることは、穀物の献げ物に、

 

35:4 施しをすることは、感謝の献げ物に匹敵する。

 

35:5 主に喜ばれるには、悪事に手を染めず、/贖いを受けるには、不義に手を染めないことだ。

 

35:6 献げ物を携えずに、主の御前に出てはならない。

 

35:7 これらすべては掟が命じていることだから。

 

35:8 正しい人の供え物は、祭壇に脂肪を滴らせ、/その香ばしい香りはいと高き方の御前に昇る。

 

35:9 正しい人のいけにえは、主に受け入れられ、/記念の供え物は、忘れ去られることはない。

 

35:10 あふれる心で主を賛美し、/お前の労働の初穂を出し惜しみしてはならない。

 

35:11 どのような献げ物も、喜びにあふれた顔で供え、/喜んで十分の一を奉納せよ。

 

35:12 いと高き方から、豊かに受けたのだから、/あふれる心で、できるかぎりのものを献げよ。

 

35:13 主は必ず報いてくださる方であり、/七倍にしてお前に報われる。

 

 

*苦しむ悩む人への神の憐れみ

 

35:14 主にわいろを贈ろうなどとするな。お受け取りにはならないから。

 

35:15 不正ないけにえを頼みとするな。主は裁く方であり、/人を偏り見られることはないからだ。

 

35:16 貧しいからといって主はえこひいきされないが、/虐げられている者の祈りを聞き入れられる。

 

35:17 主はみなしごの願いを無視されず、/やもめの訴える苦情を顧みられる。

 

35:18 やもめの涙は頬を伝って流れているではないか。

 

35:19 その叫びは、涙を流させた者を責めている。

 

35:20 御旨に従って主に仕える人は受け入れられ、/その祈りは雲にまで届く。

 

35:21 謙虚な人の祈りは、雲を突き抜けて行き、/それが主に届くまで、彼は慰めを得ない。彼は祈り続ける。いと高き方が彼を訪れ、

 

35:22 正しい人々のために裁きをなし、/正義を行われるときまで。主はためらうことなく行動し、/悪人どもを我慢なさらない。主は必ず無慈悲な者の腰を打ち砕き、

 

35:23 異邦の民に報復される。また、多くの傲慢な者たちを滅ぼし尽くし、/不正な者たちの笏を打ち砕かれる。

 

35:24 主は、行いに従ってその人に報い、/思いに従ってその働きに報われる。

 

35:25 御自分の民のために裁きを行い、/その憐れみをもって彼らを喜びで満たされる。

 

35:26 主の憐れみは苦しみ悩むときに折よく与えられ、/それは日照りが続いたときの雨雲のようである。

 36章

 

*イスラエルのための祈り

 

36:1 万物の神である主よ、/わたしたちを憐れんでください。

 

36:2 すべての異邦人にあなたへの畏れを/抱かせてください。

 

36:3 御手を異邦の民に向けて上げ、/御力を目の当たりに見せてやってください。

 

36:4 わたしたちにとって、あなたが聖であることを/彼らに示されたように、/彼らに対しても、あなたが偉大であることを、/わたしたちに示してください。

 

36:5 主よ、わたしたちが悟ったように、/あなたのほかに神はおられないことを、/彼らにも悟らせてください。

 

36:6 しるしを新たにし、不思議な業を繰り返して

 

36:7 あなたの手、右の腕に栄光を現してください。

 

36:8 憤りを起こし、怒りを注ぎ、

 

36:9 反対者を滅ぼし、敵対者を破滅させてください。

 

36:10 あなたが定められた時を思い出し、/その時を速めてください。人々があなたの力ある業を、/語るようにしてください。

 

36:11 生き残った者は、燃え盛る怒りに呑み込まれ、/御民を虐げた者たちは、滅びるように。

 

36:12 敵の支配者たちの頭を打ち砕いてください。彼らは、「我々と肩を並べる者はだれもいない」と言っているのです。

 

36:13 ヤコブのすべての部族を集め、

 

(36章1415節 原文欠落)

 

36:16 昔のように、彼らに遺産をお与えください。

 

36:17 主よ、憐れんでください。御名によって呼ばれる民、/あなたの長子とされたイスラエルを。

 

36:18 慈しみを示してください。あなたの聖所がある町に、/あなたが安息の場所とされたエルサレムに。

 

36:19 どうか、シオンをあなたへの賛美の歌で/満たしてください。また、神殿をあなたの栄光で満たしてください。

 

36:20 初めに創造された民に、あなたの約束を果たし/御名によって語られた預言を成就してください。

 

36:21 あなたを待ち望む人々にふさわしい報いを与え、/預言者たちの正しいことを立証してください。

 

36:22 主よ、御民に対する慈しみによって、/僕らの祈りを聞き入れてください。そうすれば、/あなたが永遠の神、主であることを/地上のすべての人は認めるようになるでしょう。

 

 

*賢い選択

 

36:23 どんな食物も腹には入る。だが、食物にもよしあしがある。

 

36:24 舌が獣の肉の味を見分けるように、/鋭敏な心は偽りの教えを見破る。

 

36:25 ねじけた心は悩みを引き起こす。経験豊かな人は、それに的確に対処する。

 

36:26 女は、どのような男にも、身を任せるが、/男は、あの娘よりはこの娘をと、えり好む。

 

36:27 顔形の美しい女は人を喜ばせる。これにまさって人が願い求めるものはない。

 

36:28 女の話しぶりが優しく、穏やかであるなら、/その夫はどんな男よりも運が良い。

 

36:29 妻をめとった者は、財産造りを始めたのだ。ふさわしい助け手、支えの柱を得たのである。

 

36:30 垣根がないと、地所は荒らされ、/妻を持たないと、ため息つきつつ/放浪することになる。

 

36:31 身一つで、町から町へと渡り歩く無頼の徒を、/だれが信用するだろうか。ねぐらを持たず、/日が暮れたらその場所に寝るような者を。

 37章

*友人

 

37:1 友人は皆こう言う。「わたしも君の親友だ。」しかし、名ばかりの友人もいる。

 

37:2 仲間や友人が敵に回ってしまうのは、/死ぬほどの悲しみではなかろうか。

 

37:3 ああ、邪悪な思いよ、お前はどこから紛れ込み、/大地を裏切りで覆うことになったのか。

 

37:4 友人がうまくいっているときは調子を合わせ、/不運のときには、顔を背ける仲間もいる

 

37:5 自分の腹を満たすためだけに/苦労を共にしているような仲間は、/いざ戦いとなれば、盾を取って身を隠す。

 

37:6 友人をお前の心に留め、/裕福なときにも彼を忘れてはならない。

 

 

 

*助言者

 

37:7 助言者は皆、自分の助言を推奨する。しかし、自分の利益のために助言する者もいる。

 

37:8 助言者には気をつけよ。まず、彼が何を得たいと思っているかを見破れ。自分の利益のために助言するのだろうから。さもないと、お前はどんな貧乏くじを/引き当てるか分からない。

 

37:9 彼は言う。「あなたの行く手は明るい」と。そして、お前に何が起こるかを、/わきに立って眺めている。

 

37:10 お前を疑ってかかる者には相談するな。お前をねたむ者には、胸の内を明かすな。

 

37:11 女のことでは、妻に、/戦争については、臆病者に相談するな。取り引きについては、商人に、/売り込みについては、買い手に、/また、謝礼については、けちな者に、/親切については、薄情者に相談するな。仕事については、怠け者に、/仕事の完成については、臨時雇いの者に、/また、困難な仕事については、/骨惜しみをする召し使いに相談するな。このような連中のどんな助言にも心を留めるな。

 

37:12 むしろ、掟を守っているとお前が考える/信仰深い人とつきあえ。彼はお前と気持を一つにし、/お前が失敗したとき、思いやりを示してくれる。

 

37:13 何よりも心に浮かんだ考えを大切にせよ。これ以上に頼りになるものはないのだから。

 

37:14 高い所から見張る七人の監視役にまさって、/人の魂は、時として、その人自身に語りかける。

 

37:15 これらすべてにまして、いと高き方に求めよ。お前が、真理の道を正しく歩めることを。

 

 

*知恵と悟り

 

37:16 すべての仕事は言葉をもって始まり、/考察は、あらゆる行動に先立つ。

 

37:17 心にはいろいろな事柄が刻まれており、

 

37:18 四つのものとなって現れ出る。善と悪、生と死がそれである。そして、これらを常に決定するものは舌である。

 

37:19 多くの人々を教え導くほど賢くても、/自分のことについては全くだめな人もいる。

 

37:20 巧みに言葉を操って、嫌われる者もいる。こういうやからは、食べ物にも事欠く。

 

37:21 主から恵みが与えられなかったので、/すべての知恵に欠けているのだ。

 

37:22 知恵ある人は自分自身の生活を豊かにし、/悟りは人の体に実を結ぶ。

 

37:23 知恵ある人は自分の同胞を教え導き、/悟りは確かな実を結ぶ。

 

37:24 知恵ある人はあふれるほどの称賛を受け、/会う人皆から幸せだと言われる。

 

37:25 人の命の日数は数えられるが、/イスラエルの日々は限りがない。

 

37:26 知恵ある人は同胞から誉れを受け、/その名はいつまでも残る。

 

 

*食い意地

 

37:27 子よ、生きているかぎり、自分自身を究明し、/自分に何が有害かを見極め、それを避けよ。

 

37:28 すべてが、すべての人の益になるわけでなく、/すべての人が、同じものを喜ぶわけでもない。

 

37:29 どんなごちそうであっても食い意地を張るな。食べ物の上に身を乗り出すな。

 

37:30 食べ過ぎれば病気になり、/むやみに食べると吐き気を催す。

 

37:31 多くの人が大食して死を招いた。用心する人は寿命を延ばす。

 

 38章

*医者と薬

 

38:1 医者をその仕事のゆえに敬え。主が医者を造られたのだから。

 

38:2 いやしの業はいと高き方から授かり、/それによって、王からは褒美を受ける。

 

38:3 医者はその博識によって高い身分を与えられ、/権勢ある人々の前で驚嘆される。

 

38:4 主は大地から薬を造られた。分別ある人は薬を軽んじたりはしない。

 

38:5 一本の木によって水が甘くなり、/木に備わる力が、明らかにされたではないか。

 

38:6 主は自ら人々にいやしの知識を授け、/その驚嘆すべき業のゆえにあがめられる。

 

38:7 医者は薬によって人をいやし、痛みを取り除く。

 

38:8 薬屋は薬を調合する。主の業は決して終わることなく、/健康は主から全地の人々に与えられる。

 

38:9 子よ、病気になったら放置せず、/主に祈れ。そうすれば、主は治してくださる。

 

38:10 過ちを犯すな。手を汚すな。あらゆる罪から心を清めよ。

 

38:11 良い香りの献げ物と、/質の良い小麦粉を供え物として献げよ。余裕のあるかぎり十分に、供え物に油を注げ。

 

38:12 その上で、医者にも助けを求めよ。主が医者を造られたのだから。彼を去らせるな。お前には彼が必要なのだ。

 

38:13 医者の手によって病気が治る時もある。

 

38:14 医者もまた主に祈り求めているのだ。病人の苦しみを和らげ、/命を永らえさせる治療に成功することを。

 

38:15 創造者に対して罪を犯す者は、/病気になって医者にかかるがよい。

 

 

*死者への哀悼

 

38:16 子よ、死者のために涙を流せ。お前は大きな苦痛を味わっているのだ。悲しみの歌をうたえ。彼にふさわしい礼を尽くし、なきがらを包め。また、埋葬をおろそかにするな。

 

38:17 悲痛の涙を流し、胸を打って嘆き悲しめ。彼の名にふさわしく喪に服せ。人からとやかく言われぬように一両日喪に服し、/その後、心痛がいやされるため弔問を受けよ。

 

38:18 なぜなら、悲しみから死が生じ、/心の悲しみが力を奪うから。

 

38:19 苦悩に身を置くかぎり、悲しみは付きまとい、/貧しい者の生活は、呪いに満ちたものとなる。

 

38:20 悲しみに心を奪われてはならない。人生の終わりであったとあきらめ、/悲しみを払いのけよ。

 

38:21 忘れてはいけない。その人は戻らないのだ。嘆いても彼のためにはならず、/自分の体を損なうだけだ。

 

38:22 彼の運命であったと考えよ、/お前も同じ定めにあるのだから。「昨日はわたし、今日はお前の番だ。」

 

38:23 死者を墓に休ませたなら、もう彼を思い出すな。彼の霊が去ったなら、気を楽にせよ。

 

 

*職人と学者

 

38:24 学者の知恵は、余暇があって初めて得られる。実務に煩わされない人は、知恵ある者となる。

 

38:25 どうして知恵ある者となれようか、/鋤を握り、突き棒の扱いを自慢する者が。また、牛を追い立て、仕事に忙しく、/話題は子牛のことばかりという者が。

 

38:26彼は畝作りに没頭し、/夜も寝ないで若い雌牛にえさを与えている。

 

38:27 職人や職人頭も同じだ。彼らは昼夜を分かたず仕事に励む。印章を彫り込む人々、/さまざまな下絵書きに没頭する者も同じだ。彼は本物そっくりに表現しようと精魂を傾け、/夜も寝ないで仕事を仕上げる。

 

38:28 鉄床のそばに座るかじ屋も同じだ。彼は鉄の細工物を一心に見つめる。熱風で体はやけどを負うが、/炉の熱にあてられながら、懸命に仕事をする。彼の耳には、金づちのやかましい音が鳴り響き、/目は器の形に注がれる。彼は仕事を完成させようと精魂を込め、/夜も寝ないで見事に仕上げる。

 

38:29 仕事場に腰を据える陶器職人も同じだ。彼は足でろくろを回す。常に仕事に熱中し、/その作品を数える。

 

38:30 彼は足で粘土をこねて、固さを除き、/手でそれを形づくる。上塗りをかけて仕上げるのに精魂を込め、/夜も寝ないで、窯を掃除する。

 

38:31 これらの人々は皆自分の腕に頼り、/それぞれ、自分の仕事には熟練している。

 

38:32 彼らなしに、町は成り立たず、/住み着く人も、行き来する人もいない。しかし、彼らは民の会議では意見を求められず、

 

38:33 集会においても責任ある地位には昇れない。裁判官の座にもつけず、/法律にかかわる決まりも理解していない。教訓や法律を説き明かすこともできず、/格言にも精通していない。

 

38:34 彼らは造られたこの世界の調和を固く保つ。彼らの願いは、仕事を全うすることにある。しかしながら、心を傾けて、/いと高き方の律法を研究する人がいる。

 

39章

 

 

*職人と学者(続き)

 

39:1 彼はいにしえのすべての人の知恵を詳しく調べ、/預言の書の研究にいそしみ、

  

39:2 高名な人々の話を心に留め、/たとえ話の複雑な道へと分け入り、

 

39:3 格言の隠れた意味を詳しく調べ、/たとえ話のなぞをじっくり考える。

  

39:4 彼は身分の高い人々に仕え、/為政者たちの前にも出入りする。見知らぬ人々の国を旅し、/人間の持つ、善い面、悪い面を体験する。

  

39:5 彼は早起きして、/自分を造られた主に向かうように心がけ、/いと高き方にひたすら願う。声を出して祈り、/罪の赦しをひたすら願う。

  

39:6 偉大なる主の御心ならば、/彼は悟りの霊に満たされる。彼は知恵の言葉を注ぎ出し、/祈りをもって主を賛美する。

  

39:7 彼は正しい判断と知識を身につけ、/主の奥義を思い巡らす。

  

39:8 彼は学んだ教訓を輝かし、/主の契約の律法を誇りとする。

  

39:9 多くの人々は彼の悟りを褒めそやし、/彼は永遠に忘れ去られることはない。彼についての記憶は消え去らず、/その名は代々に生きる。

 

39:10 諸国民は彼の知恵を語り、/集会は彼の誉れを告げる。

  

39:11 長生きすれば、千人にまさる名を残し、/たとえ早く死んでも満たされる。

 

 

*主とその御業への賛美

  

39:12 思いを巡らし、更に語ろう。わたしの心は、満月のように満ちている。

  

39:13 わたしの語ることを聞け、敬虔な子らよ、/流れのほとりに育つばらのように、若枝を出せ。

  

39:14 乳香のように香りを放ち、/ゆりのように花を咲かせ、/声をあげて、共に賛美の歌をうたえ。すべての御業のゆえに主をほめたたえよ。

  

39:15 主の御名をあがめ、ひれ伏せ。賛美の声をあげ、竪琴を弾き、/主を大いにほめたたえよ。賛美して、こう言おう。

 

39:16 「主の御業は、すべてすばらしく、/命じられたすべてのことは、/時が来れば実現する。」

  

39:17 軽々しく、こう言ってはならない。「これは何か」「これは何のためか」と。いずれの問いにも時が来れば答えが与えられる。御言葉によって水は盛り上がり、/その口から出る言葉によって水はためられた。

  

39:18 主が命じられると、すべて御心のままに実現し、/その救いの力を弱める者はだれもいない。

  

39:19 すべての人の業は主の前にあり、/主の目から逃れるものは何もない。

  

39:20 主は永遠から永遠まで目を注がれ、/主にとって驚くべきものは何もない。

  

39:21 軽々しく、こう言ってはならない。「これは何か」「これは何のためか」と。それぞれ目的があって造られたのだから。

  

39:22 主の祝福は川のようにあふれ、/乾いた大地を洪水のように潤す。

  

39:23 真水を塩水に変えたように、/主の怒りは諸国の民の遺産となる。

  

39:24 主の道は敬虔な人たちには平らであり、/不法の者たちにはつまずきとなる。

  

39:25 良いものは、初めから良い人々のために造られ、/悪いものは、罪人たちのために造られた。

  

39:26 人間が生きていくうえで何よりも必要なものは、/水と火、鉄と塩、/小麦粉、牛乳、蜂蜜、/ぶどうの汁、オリーブ油、それに衣類。

 

39:27 これらすべては、信仰深い人には良いもの、/罪人たちには悪いものとなる。

  

39:28 刑罰の道具として造られた風がある。それらの風は怒りを発し、その鞭を激しく振る。終末の時に、その力を存分に発揮し/造り主の怒りを静める。

  

39:29 火と雹、飢饉と死、/これらすべては刑罰のために造られた。

  

39:30 きばをむき出す野獣、さそり、蝮、/不信仰な者たちを滅ぼす罰の剣。

  

39:31 彼らは主の命令に喜んで服従し、/いざという時のため、地上で待ち構えており、/時が来ると、命令に背くことはない。

  

39:32 わたしは初めから、以上のことを確信し、/思い巡らした後、こう書き残した。

  

39:33 「主の御業はすべて良く、時が来れば、/主は必要なことをすべて満たされる。」

  

39:34 「これはあれよりも悪い」と言ってはならない。どんなものも時が来ればその良さが証明される。

  

39:35 さあ、心から、声高らかに賛美の歌をうたえ。主の御名をほめたたえよ。

 40

 

人間に共通する惨めさ

  

40:1 つらい労苦は、人間だれしも避けられないもの。重い軛がアダムの子孫にのしかかっている。母の胎を出た日から、/万物の母なる大地のもとへと戻るその日まで。

  

40: 2 人の悩みや心の恐れは/死の日を思っての不安。

  

40:3 華麗な王座に座している者から、/塵と灰の中にはいつくばっている者に至るまで、

 

40:4 紫色の衣装をまとい、王冠をいただく者から、/粗布にくるまった者に至るまで、

  

40:5 怒りとねたみ、困惑と動揺、/死の恐れ、憤り、それに争いが付き物だ。床の中で憩うときも、/夜眠るときも、それらは人の思いをかき乱す。

  

40: 6 休息はあってもなきに等しく、/たとえ寝ても、昼間のように疲れ果て、/戦いを前にして逃げ出した兵士のように、/悪夢にうなされる。

 

40:07 捕まったと思った途端に目が覚め、/何も怖がることはなかったのに、といぶかる。

  

40:8 人間から動物に至るまで、生あるものはすべて、/罪人は更に七倍受けるのだが

  

40:9 死と流血、争いと剣、/災難と飢饉、破滅と鞭打ちとを受ける。

  

40:10 これらはみな不法な者たちのために用意された。あの洪水が起こったのも彼らのせいである。

  

40:11 土から出たものはすべて土に帰り、/水から出たものはすべて海に戻る。

 

 

悪のもたらす結果

  

40:12 わいろと不正はすべてぬぐい去られ、/信実な行為は永遠に続く。

  

40:13 不正な者が得た富は、渓流のように干上がり、/雨の中でとどろく雷鳴のように消えていく。

  

40:14 施しをする人は喜びに満たされ、/掟に背く者は滅びに終わる。

  

40:15 不信仰な者のひこばえは若枝を増やさず、/その汚れた根は切り立つ岩にしがみついている。

  

40:16 あらゆる水辺や川岸の葦は、/どんな草よりも先に引き抜かれる。

  

40:17 しかし慈しみは、祝福に満ちた楽園のようなもの。施しは永遠に残る。

 

40:18 自立した生活も、雇われの生活も楽しい。だが、いずれにもまさるのは、宝を見つけること。

  

40:19 子をもうけても、町を築いても、名声を高める。だが、いずれにもまさるのは、/非のうちどころのない妻である。

  

40:20 酒も音楽も心を陽気にさせる。だが、いずれにもまさるのは、知恵を愛すること。

  

40:21 笛も竪琴も快い調べを奏でる。だが、いずれにもまさるのは、楽しい会話。

  

40:22 愛らしさや美しさを、人の目は慕い焦がれる。だが、いずれにもまさるのは、野に生える若草。

  

40:23 友人や仲間との出会いはいつも楽しい。だが、いずれにもまさるのは、/妻が夫と共にいることである。

 

40:24 兄弟や援助者は、不幸の時に頼るもの、/だが、いずれにもまさる助けは、施しである。

 

40:25 金も銀も人の足もとを固めてくれる。だが、いずれにもまさる支えは、良い助言である。

 

40:26 富と力は、人の心を自信にあふれさせる。だが、いずれにもまさるのは、主を畏れること。主への畏れがあれば、何物にも事欠かず、/ほかに助けを求める必要はない。

  

40:27 主を畏れることは、祝福された楽園のようだ。どんな栄誉にもまさって、その人を覆い守る。

  

 

物乞い

 

40:28 子よ、物乞いをして一生を送るな。そうするくらいなら、死んだ方がましである。

 

40:29 他人の食卓をもの欲しげに眺める者、/その生き方はまことの人生とは言い難い。人の食べ物で暮らすなら、彼の性根は腐れきる。良識と教養を備えた人は、/そのような生き方を避ける。

 

40:30 破廉恥な者は、物乞いの気楽さを口にするが、/やがて、その腹の中で滅びの火が燃えるのだ。

 41章

 

*死

 

41:1 死よ、お前のことを思うのは、/なんと苦痛に満ちたことか、/裕福で平穏無事に暮らしている者にとって、/また、心を悩まさず、すべてがうまくいき、/まだ楽しみを味わえる力を持つ者にとっては。

 

41:2 死よ、お前の宣告はなんとありがたいことか、/生活に困り、力衰えた者にとって、/また、老け込んで、あらゆることに心を悩まし、/頑固になり、忍耐を失った者にとっては。

 

41:3 死の宣告を恐れるな。先に死んだ人と、後から来る人のことを考えよ。

 

41:4 この宣告は生あるものすべてに主から下される。なぜお前は、いと高き方の御旨に逆らうのか。お前が十年、百年、または千年生きたとしても、/陰府では、寿命の長さは問題とされない。

 

 

 

*不信仰な者

 

41:5 罪人の子らは忌み嫌われる。彼らは不信仰な者の巣窟で育てられる。

 

41:6 罪人の子らは財産をつぶし、/その子孫は絶えず非難を被る。

 

41:7 不信仰な父親を、その子らは責める。父親のせいで彼らが非難されるから。

 

41:8 不信仰な者たちよ、お前たちは禍いだ。いと高き方の律法を捨てたからだ。

 

41:9 お前たちの子孫が増えるのは、滅びるため、/お前たちが生まれたのは、呪われるため、/お前たちが死ぬのは、呪いを受けるためなのだ。

 

41:10 土から出たものは、みな土に帰るように、/不信仰な者たちは、呪いから滅びへと至る。

 

41:11 人は、肉体の死を嘆き悲しむが、/罪人たちの名は悪しきものとして抹殺される。

 

41:12 名を重んじよ。それは後々まで残り、/金の詰まった幾千の大きな宝箱にもまさる。

 

41:13 幸せな日々には限りがある。しかし、名は永久に残る。

 

41:14 子らよ、穏やかな心で教訓を守れ。隠された知恵と埋もれた宝、/それが何の役に立つのか。

 

41:15 自分の知恵を隠す人よりは、/自分の愚かさを隠す人の方がましだ。

 

41:16 それゆえ、わたしの忠告に従え。いつも卑下すればよいというものではない。皆がすべてのことを善意で受け取るとは/かぎらないからだ。

 

 

 

*恥ずべき事柄

 

41:17 みだらなふるまいを、父や母の前で、/偽りを、支配者や王侯の前で恥じよ。

 

41:18 犯罪を、裁判官や行政官の前で、/不法を、会衆や民の前で、/不正を仲間や友人の前で恥じよ。

 

41:19 盗みを、近所の人々の前で恥じよ。神の真理と契約の前で恥じよ。食卓にひじをつくような行儀の悪さ、/物をもらったり、与えたりするときの/無礼な態度を恥じよ。

 

41:20 挨拶されたのに知らぬ顔をすること、/娼婦にみだらな目を向けることを恥じよ。

 

41:21 身内の頼みを拒絶すること、/他人の取り分、他人に渡す分を着服すること、/人妻に言い寄ることを恥じよ。

 

41:22 他人の召し使いに手を出すことを恥じよ。彼女の寝床に近寄ってはならない。友人に非難の言葉を浴びせることを恥じよ。施しをした後で小言を言ってはならない。

 

42

 

恥ずべき事柄-41章より続き

 

42:1 耳にしたことをそのまま口にしたり、/秘密を漏らしたりすることを恥じよ。そうすれば、真に恥を知る者となり、/人望を集めるであろう。

 

 

恥じる必要のない事柄

  

しかし、以下の事柄は恥じる必要がない。他人の思惑を気にして罪を犯してはならない。

  

42:2 いと高き方の律法と契約、/不信仰な者への正しい裁きを恥じるな。

  

42:3 仕事仲間や旅の道連れと勘定を清算すること、/他の相続人と遺産を分け合うことを恥じるな。

  

42:4 秤と分銅とが正確なこと、/収益高の多いこと、少ないこと、

  

42:5 商売をして得た利益を恥じるな。子供を厳しくしつけること、/悪い召し使いのわき腹を血が出るほどに/打ちたたくことを恥じるな。

  

42:6 妻が信用できないときは物に封をするのが良い。人の出入りが多い所では物に鍵をかけよ。

  

42:7 物を預ける場合には、数と重さを確認し、/収支はすべて書き留めておけ。

  

42:8 物分かりの悪い者や愚かな者、/みだらなふるまいをする年寄りを、/たしなめることを恥じるな。そして、お前は真に教訓を身につけた者となれ。そうすれば、すべての人から称賛を得るであろう。

  

 

父親と娘

 

42:9 娘は父親にとって、人知れぬ不眠のもと。娘への心配で彼は夜も眠れない。若いときには、婚期を逃しはしないか、/結婚すればしたで、夫に嫌われはしないかと。

  

42:10 またおとめのときには、父の家にいるうちに/辱めを受けて、子供を宿しはしないかと。夫を持てば持ったで、過ちを犯しはしないか、/結婚してからは、子ができないのではないかと。

  

42:11 わがままな娘には厳しい監督が必要だ。さもないと、お前は敵の笑いものになり、/町中のうわさの種、野次馬の群がるもととなり、/公衆の面前で恥をかくことになる。

  

 

女に気をつけよ

  

42:12 どんな人の美貌にも見とれてはならない。また、女たちの間に座を占めるな。

  

42:13 衣類からしみ虫が出て来るように、/女からは女の邪悪も出て来る。

  

42:14 男の悪行は、女の善行よりましだ。女は恥知らずで不名誉をもたらす。 

   

主の業

 

42:15 わたしは今、主の業を思い浮かべ、/わたしの見たことを詳しく語ろう。主の言葉によって御業は成り、/御旨のままに定めが実現した。

 

42:16 光り輝く太陽は万物に目を注ぎ、/主の業はその栄光に満ちている。

 

42:17 主はすべての驚くべき御業を語ることを、/天使たちにさえお許しにならなかった。全能の主は、万物を揺るぎなく据えられた。万物を主の栄光で満たし固められた。

 

42:18 主は地下の海も人の心も究め尽くし、/その見事な仕組みを知り尽くしておられる。いと高き方はすべてのことに精通し、/時の徴に目を留められる。

 

42:19 主は、過去と未来を告げ知らせ、/隠されたものの形跡を明るみに出される。

 

42:20 いかなる思いも、主は見逃さず、/一言半句も主は聞き逃されない。

 

42:21 主は、御自分の知恵による壮大な業を秩序立て、/永遠から永遠にわたって変わらぬ方であられる。主には、付け加えるものも取り去るものもなく/主はいかなる助言者も必要とされない。

 

42:22 主のすべての業はなんと見事なものであろうか。目に映る小さな火花に至るまで。

 

42:23 これらすべてのものは永遠に活動を続け、/すべての必要を満たし、すべてに応じる。

 

42:24 すべてのものは対をなし、一方は他に対応する。主は不完全なものを何一つ造られなかった。

 

42:25 一方は他の長所を更に強める。だれが主の栄光を見て飽き足りたといえようか。

43章

 

*主の栄光

 

43:1 澄み渡る大空はなんと高く壮大であることか。天の姿はなんと栄光に満ちていることか。

 

43:2 太陽は現れ、燦然と昇り行き、宣言する。いと高き方の御業はなんと驚嘆すべきものかと。

 

43:3 真昼になると太陽は大地を干上がらせる。だれがその灼熱に耐えられよう。

 

43:4 かまどの火を吹く人は、灼熱の中で働くが、/太陽はその三倍の熱で山々を焦がす。火のような熱気を吹き出し、/照り輝く光線は目をくらます。

 

43:5 太陽を造られた主は偉大な方。主の命令によってそれは決められた道を急ぐ。

 

43:6 月も定まった時に現れ、/季節を分け、いつまでも時を示し続ける。

 

43:7 月によって祝祭日は定められる。月の光は周期の終わりに弱まっていく。

 

43:8 月々の名前は、空のこの月によって付けられ、/月は驚くばかりに形を変え、満ちていく。それは天の軍勢の合図の光、/天の大空にあって照り輝く。

 

43:9 光り輝く星は、夜空の美しい装い。主の高き所できらめく飾り。

 

43:10 聖なる方の命令で、星は定められた場所につき、/見張りの務めを決して怠ることはない。

 

43:11 虹を見て、その造り主をほめたたえよ。その輝く様はひときわ美しい。

 

43:12 それは天に栄光の弧を描く。これはいと高き方の手が引き絞ったもの。

 

43:13 主は命令を下して吹雪を起こし、/主の裁きを行う稲妻を走らせる。

 

43:14 そこで、倉は開かれ、/雲は鳥のように飛び立って行く。

 

43:15 主は大いなる力をもって雲を固め、/粉々に砕いて雹にされる。

雷鳴のとどろきに大地はもだえ苦しみ、

 

43:16 主が現れると山々は震い動く。/主が望まれると南風が吹き、

 

43:17 つむじ風と北風が吹き荒れる。舞い降りる鳥のように、主は雪をまき散らされ、

その落ちる様は飛び交ういなごの群れの様だ。

 

43:18 目はその美しい白さに驚き怪しみ、/心はその降りしきる様に恍惚となる。

 

43:19 主は塩のように霜を地上にまかれる。それは凍って、鋭いとげのある花のようになる。

 

43:20 寒い北風が吹くと、/水の面は固い氷となる。水のある所どこにでも吹きつければ、/水はあたかも胸当てを着けたようになる。

 

43;21 北風は山々を食い尽くし、荒れ野を焼き払い、/火のように若草を枯らしてしまう。

 

43:22 しかし、雨雲はすべてを速やかにいやし、/露は熱風を追い散らし、気分をさわやかにする。

 

43:23 主はその計らいによって地下の大海を静め、/島々をその中に据えられた。

 

43:24 海を旅する者たちは、海の危険について語り、/我々はそれを聞いて驚く。

 

43:25 そこには、不思議な驚くべき主の御業がある。あらゆる種類の生き物や海の怪物がいる。

 

43:26 主の使いは、主の力によって務めを果たし、/主の言葉によって万物は秩序立てられている。

 

43:27 いかに多くを語っても、決して語り尽くせない。「主はすべてだ。」このひと言に尽きる。

 

43:28 主の栄光をたたえる力をどこに見いだせよう。主は御自分のすべての御業にまさって偉大だから。

 

43:29 主は恐るべき方、極めて偉大な方。その力は驚嘆すべきもの。

 

43:30 主の栄光をたたえ、力を尽くして主をあがめよ。主はなお、あらゆる賛美にまさる方。全力を傾けて主をあがめよ。うむことなく賛美せよ。これで十分だということはないのだから。

 

43:31 だれが主を見たか、だれが主を語りえようか。だれがふさわしく主をたたええようか。

 

43:32 以上のことよりまだ多くの偉大な秘義がある。我々は、御業のほんの一部を見たにすぎない。

 

 

43:33 主は万物を創造し、/信仰深い人に知恵を与えられた。

 

44

  

先祖たちへの讃歌

 

44:1 誉れ高き人々をたたえよう、/我々の歴代の先祖たちを。

  

44:2 主は大いなる栄光を現し、/世の初めからその威光を示された。

 

44:3 先祖たちのある者は国々を支配し、/武勇によって名を輝かせた。ある者は思慮に富んだ勧めを与え、/預言の言葉を語った。

 

44:4 ある者は英断と/法規の知識をもって民を導き、/知恵ある言葉で人々を教えた。

 

44:5 またある者は楽の音を究め、/詩歌を書き記した。

 

44:6 またある者は力に恵まれ富を得て、/自分の家で安らかな時を過ごした。

 

44:7 先祖たちは皆、その時代に誉れを受け、/生涯にわたって、人々の誇りであった。

 

44:8 しかし、先祖たちの中には、後世に名を残し、/輝かしく語り継がれている者のほかに、

 

44:9 忘れ去られた者もある。彼らは、存在しなかったかのように消え去り、/あたかも生まれ出なかったかのようである。彼らの子孫も同様であった。

 

44:10 しかし慈悲深い先祖たちの/正しい行いは忘れ去られることはなかった。

 

44:11 彼らの子らのもとに、/良き遺産、孫たちが残る。

 

44:12 彼らの子孫は契約を守り、/先祖たちに倣ってその子供たちも契約を守る。

 

44:13 彼らの子孫はとこしえに続き、/その栄光は消え去ることがない。

 

44:14 先祖たちのなきがらは安らかに葬られ、/その名はいつまでも生き続ける。

 

44:15 諸国の民はこの先祖たちの知恵を物語り、/神の民は先祖たちをほめたたえる。

 

44:16 エノクは主に喜ばれて天に移され、/後世の人々にとって悔い改めの模範となった。

 

44:17 ノアは全き義人であった。神の怒りの時、ノアが人類を代表し、/洪水が起こった時、/彼により人類は地上に残ることができた。

 

44:18 神は永遠の契約をノアと交わされた。すべての生あるものを洪水によって/消し去ることはしないと。

 

44:19 アブラハムは諸国の民の偉大な父であり、/その名声には何のかげりもない。

 

44:20 彼はいと高き方の律法を守り、/神は彼と契約を交わされた。彼は契約のしるしを体に受け、/試みに遭ったときも、忠実であり続けた。

 

44:21 それゆえ、神はアブラハムに/次のように約束された。諸国の民は彼の子孫によって祝福を受ける。彼の末は地の砂の数ほどに多くなり、/その子孫は空の星のように高く上げられる。海から海に至り、/川から地の果てに及ぶ地を、/彼らは代々受け継ぐようになる。

 

44:22 神はイサクに対しても、/その父アブラハムのゆえに同じ事を約束された。すべての人々への祝福と契約を、

 

44:23 神はヤコブの頭上に置かれた。神はヤコブを数々の祝福をもって承認し、/受け継ぐべき地を彼に与えられた。神はその地を分け、/十二部族にそれぞれ授けられた。

 45

 

モーセ

 

神はヤコブから慈悲深い人を起こされた。彼はすべての人々から好意を持たれ、

 

45:1 神と人々に愛されていた。モーセがその人であり、/彼は祝福のうちに覚えられている。

 

45:2 神は御使いに等しい栄光をモーセに与えて、/彼を大いなる者、敵どもの恐怖の的とされた。

 

45:3 モーセの執り成しの言葉により、/神はさまざまなしるしを行い、/王たちの前で彼の名声を高めた。彼を通して民に命令を与え、/また御自身の栄光の一端を彼に示された。

 

45:4 モーセの忠実と柔和のゆえに神は彼を聖別し、/すべての人の中から彼を選び出された。

 

45:5 神はモーセに御声を聞かせ、/黒雲の中に彼を導き、/顔と顔を合わせて掟を与えられた。

 

それは、命と知識をもたらす律法であり、/ヤコブに契約を、/イスラエルに御自分の定めを、/教えるものであった。

 

 

アロン

 

45:6 神はアロンをモーセに等しい/聖なる者に高められた。彼はレビ族の生まれ、モーセの兄であった。

 

45:7 神は彼と永遠の契約を結び、/民の祭司としての権限を彼に与えられた。神は彼を美しく装わせて、祝福し、/輝かしい衣をまとわせられた。

 

45:8 神は華麗な衣装を身に着けさせ、/権威の象徴として冠をかぶらせ、/亜麻布のズボン、長い服、/エフォドをまとわせられた。

 

45:9 衣の裾の回りにはざくろの飾りと/たくさんの金の鈴が付けられた。彼が歩くたびに鈴が鳴り響き、/聖所にこだました。それは、神が民を思い起こすためであった。

 

45:10 その聖なる衣服には、金、青、/紫の刺しゅうが職人によって施され、/真実を明らかにする/裁きの言葉が織り込まれていた。

 

45:11 それは職人が緋色の糸で織り上げたもの。そこに付けられた多くの宝石は、/細工師によって/印章のように刻まれ、/金の台座にはめ込まれていた。記念として刻み込まれた文字は、/イスラエルの部族の数に対応していた。

 

45:12 黄金の額当てがターバンの上に付けられ、/それには聖別の印が刻印されていた。それは誇らしい豪華な傑作、/目をみはらせる飾り、

 

45:13 これほど美しいものはアロン以前にはなかった。ほかの者は決してこれを身に着けることはなく、/ただ彼の子供と子孫だけが、/これを代々身に着ける。

 

45:14 彼は焼き尽くすいけにえの献げ物を/絶えることなく、日に二度ささげる。

 

45:15 モーセは両手に聖なる油を満たし、/それをアロンに注いだ。これはアロンとその子孫に対して、/天の在るかぎり続く永遠の契約となった。こうして彼は主の祭りをつかさどり、/祭司の務めを果たして、/御名によってその民を祝福する。

 

45:16 神は彼をすべての生けるものの中から選ばれた。それは、主に供え物と/かぐわしい香りを記念として献げ、/民の贖いの儀式を行わせるためであった。

 

45:17 神はアロンに掟を託し、/律法を解釈する権限をお与えになった。それはヤコブに主の御旨を教え、/イスラエルを律法の光で照らすためであった。

 

45:18 ある時、アロンの一族以外の者がねたみを起こし、/荒れ野で彼に逆らって立った。ダタンとアビラムの一党であり、/怒りに狂ったコラの徒党であった。

 

45:19 主はそれを見て、快しとせず、/激しい憤りをもって彼らを滅ぼし尽くされた。主は彼らに対して不思議な業を行い、/燃え盛る炎で彼らを焼き尽くされた。

 

45:20 こうして主はアロンに栄誉を増し加え、/代々受け継がれるものを彼に与えられた。それは収穫の初穂の分け前であり、/神はまず彼の食物を十分に用意されたのだ。

 

45:21 それゆえ祭司たちは/主にいけにえとして献げられた物を食べる。それは主がアロンとその子孫に与えられたもの。

 

45:22 だが、民の土地には/アロンの受け継ぐ分はなく/民の間で彼には何の分け前もない。主は言われる。「わたし自身がお前の分け前、/お前の受け継ぐべきもの」と。